劇団アランサムセ 
「新婚さんオソオセヨ(いらっしゃい)」
ロミジュリVS春香夢竜――東西新婚カップルのゆくすえは……?

明るい社会アランサムセの
「まだ死んでへんでー。生きてるでーッ」


杵渕 里果
 これは◎。韓国の留学生で知り合いがいたので、誘えばよかった ! と悔やみました。
 舞台はテレビ番組「新婚さんいらっしゃい」の生放送。司会はかつての売れっ子、今はマネージャーの奔走でようやく仕事にありついているタレント桂三枝、ではない桂三下(かつら・さんした、すごい鬘をつけている)とマミ。文学上の著名カップルに登場してもらう企画で、第一回は貫一お宮だったが、新婚ではないと抗議が殺到したりしてどうも視聴率がふるわない。今回は、ロミオとジュリエット、春香伝の春香と夢竜、二組のカップルを呼ぶ。新婚とはいえ四人とも15歳前後で封建的な倫理観が強く、そもそものなれそめを聞いたりする前半は司会の桂(金正浩)やマミと、どたばたが展開。
 番組の目玉、カップルの「愛」を試す〈試練の館〉のコーナーでは、ロミオとジュリエット、春香伝の後半部が(ビデオで?)再現される。ここは朝鮮語だけど、オナジミ物語だし、演技もクサイから、笑いどころもなんとなくわかる。
(これは日本人客が、「わからない」というのに気遣って、今回はじめて企画してくれたサービスらしい。)「どうせ慰安婦の娘じゃないかっ。抵抗するならイラクに送ってしまえ」と、強引に春香を妾とすべく監禁する悪代宮イシハーラは、一方で、イタリアの貴族の娘ジュリエットと結婚するつもり。「さすがはイタリアの貴族。アジアで唯一の近代化をなしとげたニッポン人の優秀な遺伝子を所望するとは」とかいって、思う存分にくにくしい。
 この「試練」に、ロミオとジュリエットはどんどん自害へとすすんでいく。が、それとは対照的に春香たちは、離れ離れになっても必ず生きて会おうと誓い合う。つまり、ジュリエットはロミオの後を追っていくだけだが、一方の夢竜のほうは、中央で名をなして帰国、覆面してイシハーラの誕生パーティーに現われ、突然、なぜか、ゴレンジャーに変身するのだ。あとは、例のキメポーズによる五人の自己紹介。イシハーラ一味を一網打尽。夢竜は、赤レンジャーとして春香を牢屋から救い出し、「まだわからないのかい?(朝鮮語)」。仮面を脱いで感動の再会となっていく。
そして最後、テレビの世界からほとんど引退を観念していた桂三下も、渾身の力をこめて叫ぶのである。「まだ死んでへんでー。生きてるでーッ」と。在日という彼らの抱え込む政治性が、イシハーラや、ロミジュリに対する春香夢竜の優越としてまっとうされていて、すてき。ゴレンジャーに新婚さんいらっしゃいという地味なネタも、いかにも、在、日、だったんだなあと、思わせる感触がたのしい。
 また、プサンから男優女優が二人(金世一、李知映)客演していて、朝鮮語しか話せない彼らを、演出は、番組中の「原作のカップル再現映像」に当てたり、試練の館で苦悩する春香たちの鏡像にしたり、違和感なく融合させていた。やっぱ劇団全員と言葉が通じる客演はいい。言葉や文化的な記憶の匙加減で、これからもいろんなことやってみせてほしい。坂手洋二のようにまじめな暗い社会派にだけはならないでくれ……と思います。
(きねふち・りか/演劇批評・「テオロス」同人 03/12/03)