<片寄直樹さん> 劇団バカバッドギター (「伝染するラプンツェル」7月23日−25日)

片寄直樹さん
【かたよせ・なおき】
 1970年、島根県松江市生まれ。茨城大学演劇サークル「風の街」で活躍。98年、同OBを中心に劇団バカバッドギターを結成。近未来を舞台にした独特なストーリーと役者の個性を生かした演出で知られる。

 「カタルシスを味わって スピーディーでコミカルな舞台」

−これまでの公演紹介を見ると、SFっぽい物が多いですね。
  スペースオペラ系ではありませんが、割に藤子不二雄っぽいSFと言いましょうか、少し不思議な要素を盛り込んだお話が多いです。よく漫画っぽいって言われるんですけど、コマ割りを意識したスピーディーな展開を意識的にやっている面がありますね。コメディーという言葉はどうかと思いますが、コミカルに、つまり笑えてテンポがよい話が多いと思います。

−SFだと、フィリップ・ディックなんかも…
  ええ、一応読みました。SF少年でしたから。でも、ぼくらは漫画からイメージをもらったり、そのイメージを現代にはめ込むとどうなるかという形で話を作ってきましたので、直接の影響はないですね。

−タイトルはアルファベットやカタカナが多いようです。公演内容と関連しているんですか。
  前回の「Planx32」のPlanx は、中世ヨーロッパで不敗と言われる軍隊の陣形だそうです。今回のラプンツェルはグリム童話から取りました。ラプンツェルという名の女の子が魔法使いにさらわれて、高い塔に閉じこめられているんですが、窓から垂らした彼女の長い髪を伝って王子様が逢いに行く。それに気付いた魔法使いが、登っている途中で髪を切り落とし、王子は転落して失明してしまう…。そんな残酷な話が今回の芝居の根っこにあります。
  それと今回は怪談と言うか、ホラーが書きたかった。西欧のドラキュラのような話ではなく、日本に古くから伝わる背筋がゾッとするような怪談ですね。

−作風が変わるんですか?
  いえいえ、作りが変わるわけではなくて、これまでのスピーディーでコミカルな作風に怪談がテイストとして加わるということです。

−もう少し内容を聞きたくなりますね。
  前回公演で「センバツ」というゲームが登場したんですが、そのゲームのキーワードであり、けしかけている本人のパスワードが3本足の八釈烏(やたがらす)なんです。この烏は天照大神の遣いとされ神々しい存在である反面、この烏に見られると魂を抜き取られるという言い伝えもある。このダブルミーニングと言うか、極端な両面が今回も絡んできます。殺人事件の現場に3本足の鳥のマークが残っていて、精神科医が人間の脳世界の成り立ちや構造を紐解いていく−。今回はそんなお話です。

−学生時代から演劇活動をされていたそうですが、傾向は変わりませんか。
  ぼくらはエンターテインメント系で一貫していますね。同じお金を払って見てもらうんなら楽しんでほしい、カタルシスを味わってほしい。見終わった後、活性化して帰ってほしいですね。これは今も変わりません。

−劇団のメンバーは?
  学生時代からの人もいますが、社会人になって離れてた人もいるし、今はさまざまです。役の作り込みに割に長い時間をかけるので、この点は自信もあるし劇団のウリになると思います。役者とストーリーを見に来てください。

−どんな劇団の芝居が印象に残っていますか。
  「第三舞台」「夢の遊民社」「青い鳥」「遊◎機械/全自動シアター」、あとケラリーノ・サンドロビッチの「劇団健康」や「ブリキの自発団」が好きでした。バカバッドの根っこにあるのは、いわゆる小劇場全盛の時代に地方の高校生(自分)があこがれた、華やかでかっこいい芝居ですね。

−アリス劇場に登場した劇団も多いですね。
  そういう意味で、あこがれのタイニイアリスで公演できて夢が叶います。率直にうれしいですね。
(2004年5月29日、足立区内の公民館)

<ひとこと>  劇団の名は、たまたま街頭で配布されていたヒンズー教典「バカバッドギーター」を見掛け、その音の響きがおもしろくて取ったそうです。稽古中なのにメンバーの皆さんも笑顔で迎えてくれました。和やかでまとまりのある集団という感じがしました。これからのブレークを期待しています。
(インタビュー・構成 北嶋孝@ノースアイランド舎)

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