<濱田和幸・清河寛さん>ハマコクラブ×キヨコクラブ(「日はまた昇る・・・か?」11月12日-15日)
「天才的なひらめきと絶妙な掛け合いが織りなす “お客さま第一芝居”」
【写真は、濱田和幸さん(手前)と清河寛さん】 |
−ハマキヨ結成のいきさつを教えてください。
濱田 私は俳優の榎木孝明の一番弟子なんです。最初に「弟子にしてください」とお願いしたときには「ダメ」と断られたのですが、3年間ねばったところ、「そんなになりたいのなら、もういいよ」ということになって。「おしかけ女房」ならぬ「おしかけ弟子」といわれています。
清河 私は小劇場の劇団を経て、榎木孝明の三番弟子になりました。
濱田 その後、藤山直美さん主演の「女やさかい」という舞台に2人が出演したとき、脚本家の池田政之先生と知り合いになりまして、2人とも妙に気に入られたんです。ある酒の席で池田先生が突然「ひらめいた。おまえら2人で芝居せい。脚本も俺が書いたる」と。2人とも半信半疑だったので、その場にあった箸入れに一筆書いてもらったんです。醤油で拇印も押していただいて(笑い)。翌日、二日酔いの先生に「昨日の話、覚えてますか」と聞いたところ「なんにも覚えてない」とおっしゃるので、その箸入れを見せたんです。すると「あちゃー、ワシの字や。よっしゃ、約束は守る」と。これがハマキヨの始まりです。
清河 2人とも舞台やテレビドラマの仕事をやりながら、1年に1本ずつ池田先生の作・演出でハマキヨの公演を続けてきました。
−ハマキヨの舞台にも喜劇の影響が強いのでしょうか。
濱田 完全な、ど喜劇ですね。むずかしい話は抜きで、起承転結があって、笑いがあって、涙があって、あー気持ちよかったと感じていただけるような芝居です。
清河 ハマキヨのモットーは“お客さま第一芝居”といいまして、とにかくわかりやすく、お客さまありきでやっています。
−これまでの公演を通じて、共通性などはあるんですか。
濱田 今回登場するアイドルスター「今谷プー」と落ち目の芸人「山田喜一郎」は、以前の公演に出てきた登場人物なんです。以前とは境遇ががらっと変わってしまった2人が同じ楽屋で鉢合わせになるという設定です。もちろん、今回だけで完結した話になっていますので、前の公演を見ていない方にも十分楽しんでいただけます。
清河 池田先生からは公演のたびに、漫才、浪漫劇、コントなど毎回違ったテーマを与えられています。漫才というのはこうやってつくっていくのか、浪漫劇というのはこういうものなのか、といったことをお客さんにわかっていただけるような内容になっているんです。
−それでは、今回の公演のテーマは・・・。
濱田 それは秘密ということで。
清河 見てのお楽しみです。
−稽古はどんな様子なんですか。
濱田 もう、苦労の連続です(笑い)。こういった芝居では1カ月から2カ月かけて稽古をするのが普通だと思うんですが、われわれの場合は2週間です。しかも、台本があるにはあるんですが、演出席にいる池田先生がたびたび「ひらめいた。ちょっと書け」といわれるので、その場でわれわれが先生の言葉をメモするんです。とにかく天才的にいろいろとひらめいてしまう方ですね。それで「いまのセリフを全部覚えろ」と。だから、台本は手書きの部分の方が多くなって、いつも真っ黒です。
清河 できあがったばかりの台本を稽古前にめくってみると「この場はみんなでがんばろう」としか書いてない部分もあるくらい…。そういう個所は稽古のなかで手書きで加えていくことになります。
濱田 でも、そうやってあとから加えた部分ほど、本番でお客さんにうけたりするんですよ。
清河 そういったところまで計算に入っていて、あえて完全には作り込んでいない台本で稽古を始めるんだと思います。
濱田 だから、稽古ではおおまかな段取りだけ打ち合わせをして、通常のセリフ合わせはやりません。やっても無駄になってしまうので。
清河 そもそも、濱田さんも台本どおりに言わないんだもの(笑い)。
−より大きな劇場で、という声はかかりませんか。
濱田 事務所の社長からはハッパをかけられるんですが、大きな劇場でお客さんがぽつぽつというよりも、小さな劇場でぎっしりという方が熱気があっていいような気もします。もちろん、大きな劇場でぎっしりと入ってもらえれば一番いいんですが。
清河 そういう目論見もあってか、公演を重ねるごとにキャストの数は増えているんです。第1回と第2回の公演ではハマキヨの2人のみ。第3回は3人、第4回は4人で、今回は5人になりました。このままいけば、来年の公演では6人になるのではないでしょうか(笑い)。
−11月12日が初日ということですが、稽古のスケジュールは。
清河 台本は先週いただいたんですが・・・。
濱田 稽古は11月に入ってからですね(笑い)。
(2004年10月6日、新宿・喫茶店。インタビュー・構成 吉田ユタカ、北嶋孝)
<ひとこと> 笑顔で突っ込みを入れる濱田さん。やんわり返す清河さん。会話の機微を心得て、押したり引いたり息を合わせる2人の掛け合いに、インタビューは終始笑いに包まれました。喜怒哀楽を織り交ぜ、涙と笑いを誘う舞台の秘密を、ちょっとだけ見せてもらったような気がします。
(北嶋孝@ノースアイランド舎)