<澤 唯さん> projectサマカトポロジー 「そう言えば忘れてた」 3月24日−27日)

片寄直樹さん
【さわ・ゆい】 1974年6月埼玉県和光市生まれ。1年間限定の劇団「シリアスケース」に参加。その後「サマカトポロジー」に加入し、2001年から代表、作・演出を務める。
webサイト:http://www.somecut.com/

 「流れている時間を切り取る 集団認知の公演、企画を」

―劇団の名前が非常に珍しいですね。
 造語なんです。僕の前に劇団を立ち上げた男がいまして、彼がつけた名前なんですけれども、分けるとsome、cut、topology・・・つまり、ひとつの物語を構成するのではなく、いろんな断片を並べ立てて、そこに一貫した世界観を見出すような手法というような意味でつけたみたいですね。

―最初は後藤ひろひとさんの劇団に参加していたんですか?
 後藤さんが東京で一年間だけの劇団をつくるという企画(劇団「シリアスケース」)がありまして、その公演に参加していたメンバーだった元主宰者がつてをたどって人を集めて立ち上げたのが最初ですね。1999年1月の旗揚げです。

―元主宰者の方は途中でお止めになったのですか? 困ったでしょう。
 本当に。突然大阪公演をやるとか言い出して、その大阪公演が終わって帰ってきたころはもう「僕、演劇はいいかな・・・」とか言い出して(笑)本当にびっくりでした。「じゃあ後は頼んだ」みたいな感じで去っていってしまいました(笑)。

―澤さんが代表になったのはいつからですか?
 第7回公演(2001年4月)からです。

―芝居の中身はかなり変わりましたか?
 変わっていますね。書くものが違うし、笑いが多くなって、わかりやすくなったんじゃないでしょうか。

―澤さんがずっと作・演出を担当されているんですか。
 代表になってからは、企画的な公演で外から招いたりということはありましたが、基本的に定期公演はすべて作・演出を担当してきました。

―今、どういうステージを目指していますか。やはり、断片を並べて何かを作り上げるそういう枠組みは持たないんですか。
 そうですね。ただ、始まりがあって、中盤で盛り上がって、最後にきっちり終わる物語を書くのはそんなに得意じゃないですね。断片を並べるというよりも、流れている時間の一部分を切り取っている、という感じですね。ヘタに語るよりも、切り取って見せるほうが、今は自分の思ったものが見せられるんじゃないかなと思います。

―メンバーはかなり変わったんですか?
 最近になって新しい人が入ったわけではないんですが、何しろ、僕を含めて旗揚げ公演に出ていない人間のほうがはるかに多いんですよ。

―旗揚げには出ていらっしゃらないんですか?
 旗揚げの時は観客でしたね。僕はその後藤ひろひと劇団「シリアスケース」の中から派生した別のユニットに参加して作・演出をやっていました。ものすごく近い時期にお互い公演をやっていたので、見に行ったんです。実は旗揚げから出ているのは5人の劇団員の中では1人だけなんです。

―今度の公演のタイトルは何でしょうか。
 「そう言えば忘れてた」ですね。「忘れてた」のあとにハートマークがつきます。

―だいたいどのようなお話なんでしょうか。
 ・・・そのままなんですよね(笑)

―シチュエーションなどは。
 病院のお話です。病院の話だけれど、病気の話とかはほとんど出てこないっていう。

―お医者さん、患者さん、看護婦さんの会話ですか。
 そうですね、その人たちが深刻じゃないことばかりを話しているという場面を切り取りたかった。「今度やるお楽しみ会をどうするか」とか(笑)。そんな中で、はたから見たら多分さほどではないんだけれども、本人にとっては深刻なことをそれぞれが抱えているということが見えてくると良いかなと思います。

―平田オリザの「S高原にて」と同じようなシチュエーションですね。
 「静かな演劇」は目指していないんですけどね(笑)。平田さんの世界はあまり知らないですが、僕の芝居はもっと馬鹿に見えるというか、本人が真剣だからこそ、はたから見るとものすごく滑稽に見えるようになれば成功なんじゃないかと思います。それは今回だけでなく、今までこだわり続けてきたことなんです。もちろん、笑わせようとして入っているギャグなんかもあるんですが(笑)。それとは別にものすごく間抜けなこと、物悲しいことを一生懸命やっている様子を見せられればいいなと思っています。
  大直球は苦手ですよね。正面切って「どうだ」っていうのはちょっと・・・気恥ずかしさがある。多分、役者としては「そんなもの」と言いながらも、実際やったら気持ち良かったりするんじゃないかと思うんです。ただ、書いたり演出したりという視点から見たときは、どうしてもそれを茶化したくなるんです。だから、同じようなことをやっているんだけれども、見ている側が、それがパロディーであるとか、それを少しズラしているんだということを分かって笑える方法を選択することが多いですね。その中で「ボソッ」と本音が出るところをどうやって拾ってもらうかというところに苦心しているような気がします。

―旗揚げは別として、舞台に立っていたんですか。
 はい。元主宰者がいたころはずっと役者だけやっていました。一度だけ、何シーンかを提供して形としては共同作になっている公演をやりました。作・演出をやるようになってからは自分が心から信頼出来る演出家に出会うまでは腹をくくって自分で演出をしていこうと思っています。ベースは役者だと思ってます。

―今年はこういう方向で進みたいというものはありますか。
澤 難しいですよね。「劇団として認知されたい」ということは共有出来ているんですが、逆にそれ以外のことは結構違うんじゃないかなと思うんですね。僕個人としては、単純に「芝居が上手くなりたい」「自分が作・演出としてどうなっていくのか」ということに興味がありますね。ただ、劇団が認知された後に、個人個人が売れたいという気持ちもわかるし、それも満たされる集団でありたいと思っているので、とにかく「サマカトポロジー」という集団が認知されるような公演や企画をやっていけたらいいなと思っています。
(2005.2.10 新宿の喫茶店にて)
(インタビュー・構成 北嶋孝@ノースアイランド舎/葛西李奈)

<ひとこと> シャイでちょっぴりうつむき加減の顔立ちの整った横顔から、時折見せる笑顔が印象的でした。ちょっと油断していると気付いたときには目が離せなくなっている、そんな芯の強さを感じました。きっと、サマカトのお芝居の中にもそのような要素がたくさん含まれているのでしょう。これからどのような活動をしていくのか、楽しみです(葛西李奈)
  個人的には小説も書きためているようです。ぜひこちらの分野でもチャレンジしてください。(北嶋孝@ノースアイランド舎)

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