<待田堂子さん・石垣まさきさん・大田良さん・中澤昌弘さん> 楽天舞隊 (「三人三色」4月7日−10日)

写真は右から待田堂子さん・石垣まさきさん・大田良さん・中澤昌弘さん
【まちだ・とうこ】(写真左)愛知県生まれ。楽天舞隊の主宰・脚本・演出を務めるかたわら、シナリオライターとしても活躍。1999年に橋田賞新人脚本賞入賞。
【いしがき・まさき】(写真中央右)1976年埼玉県生まれ。2002年の旗揚げから楽天舞隊に参加。
【おおた・りょう】(写真中央左)1979年福岡県生まれ。2004年4月から楽天舞隊に参加。
【なかざわ・まさひろ】(写真左)1981年栃木県生まれ。2004年4月から楽天舞隊に参加。
webサイト:http://www.ne.jp/asahi/machida-do/honke/

 「力強くも華麗なカンフー活劇・・・とはひと味違う番外公演」

−カンフー活劇を主体とした公演をされているそうですが。
待田 通常の本公演では中国拳法のカンフー活劇を主体としています。一言でいうと、エンターテイメント系のハチャメチャ活劇ですね。劇団の役者は3人しかいないので、あとは公演のたびに客演のかたをお願いしているんですが、すべて男性だけで、江戸時代の歌舞伎のような華やかさを醸し出しています。

−ストーリーはどのような感じなんですか。
待田 第1回から第3回の公演では、中国の漢とか秦の時代の歴史物を3部作として上演しました。実在の人物を織り交ぜながらもストーリーはオリジナルで、基本的には勧善懲悪ものですね。昨年からは新たに「忍者もの」の芝居も始めました。

−なぜ、カンフー活劇だったんでしょう。
待田 あとでご紹介しますが、劇団員の石垣と大田、それに私の3人は現在も中国拳法の道場に通っています。特に石垣はブルース・リーやジャッキー・チェンなどの香港映画が大好きで、舞台で生(なま)のカンフーができないか、というのが旗揚げのきっかけです。以前からアクション系の劇団はいくつかありますが、本格的な中国拳法で、なおかつ男性だけというところが楽天舞隊の特徴ですね。

−ところで、今回の「三人三色」は番外公演ということですが。
待田 これまでは活劇ばかりでしたので、役者として、脚本・演出として、また劇団としても振り幅を持たせるという意味で、普通のストレートプレイの芝居にも取り組んでいかなくてはいけないという思いがありました。ただ、今後もカンフー活劇を主体としていく路線には変わりありません。

−「三人三色」は3話のオムニバスで、役者のみなさんが原作を担当されたとか。
待田 どうせやるんだったら、役者がやりたい話をやったほうがおもしろいので、3人の役者がそれぞれ原案・原作を担当して、それをもとに私が脚本を書きました。

−それでは、第1話から順にそれぞれの内容について教えてください。
石垣 「待ってて!コイサンマン〜誰だね?ちみは?〜」を担当した石垣まさきです。私はあまり堅い話は好きではないので、構えてみるようなストーリーにはしていません。単純に楽しんでもらえればいいなと思います。1話目ですし、肩の力を抜いてみていただきたいですね。

−ハードボイルドものということで、わりとシリアスな話になるんですか。
石垣 むしろ、登場人物がハチャメチャなことをいいつつ、最後にはホロッとさせて、最後の最後にはまた楽しく終わっていくようなイメージです。
待田 3話のなかでは、楽天舞隊の本公演の雰囲気に一番近い芝居ですね。

−主人公の名前が「コイサンマン」というのは、なにか理由があるんですか。
石垣 とくに意味はなくてパッと頭に浮かんだだけなんです。結構ゴロもいいかなという感じで(笑い)。
待田 ちなみに、「楽天舞隊」という名前も彼と演出補が共同で考えて命名したんです。
石垣 暴走族っぽいイメージで「舞台」ではなく「舞隊」にしてみたんですが、お店で領収書をもらうときなどは説明するのが面倒ですね(笑い)。

−それでは、第2話はどんな話になるんでしょうか。
大田 「僕の居場所〜アネモネ・デイズ〜」を担当した大田良です。この話は基本的にラブストーリーなんですが、普段あたりまえのように生活しているなかに、実は幸せは隠れているんだ、ということを感じ取ってもらえるような作品にしたいと思っています。お客さんにも、普通の生活のなかの幸せに少しでも気づいてもらえればいいですね。

−ある程度、実際の体験を踏まえているんですか。
大田 まあ多少は・・・(やや照れ)。
待田 えー、それは初耳! そうなの!
大田 そんなに驚くところじゃないですよ(笑い)。

−本公演とは違ったテイストの芝居になりそうですね。
大田 まったく違いますね。
待田 構想の段階で、ハードボイルド、ラブストーリー、サイコホラーという3つのカテゴリーじたいは私のほうから提示したんです。それで3人に「どれがやりたい?」と聞いたら、みごとにダブらなかったんですよ。

−では、第3話について教えてください。
中澤 「アルカイック・スマイル〜慎二の場合〜」を担当した中澤昌弘です。私は劇団のなかで唯一、中国拳法をやっておらず、そもそも中学生の頃からずっと文化部でやってきた“動けない”人間です(笑い)。本音をいってしまうと、活劇よりも普通の真芝居に興味があって、そちらのほうが自分に向いているんじゃないかと思っているので、今回の番外公演には私が一番乗り気でしたね。
一同 ハハハハ。

−サイコホラーというのも、番外公演ならではの取り組みですね。
中澤 普段の本公演は基本的に観後感のよいウェルメイドな芝居になっていますが、この話はあえて後味の悪いものにしてみました。サイコホラーですがステレオタイプな「恐怖」ではなく、「静かな不気味さ」というのがこの話のキーワードですね。

−体育会系ではない中澤さんが楽天舞隊に入ったきっかけはなんだったんですか。
一同 ハハハハハハハハ。
中澤 おととしの8月にラジオドラマの脚本を舞台化するという企画があったんですが、そのオーディションで待田さんと知り合って、誘われたのがきっかけですね。正直いって、かなり迷ったんですが、「活劇にも動きのない人がいてもいいから」と、うまく丸め込まれました(笑い)。まわりの知人からも「絶対に向いてないよ」といわれたんですが・・・。
待田 アクション以外のパートでは、核となる人物が必ずしもアクションをしなくても成立するような芝居スタイルができあがってきていますので、彼も劇団には欠かせない役者ですね。

−待田さんはシナリオの仕事もされているようですね。
待田 もともとは化粧品会社の宣伝部で商品の宣伝を担当していたんですが、ラジオのCMを30秒のシナリオ仕立てでやるという仕事があって、それがシナリオに関わるきっかけでした。それを機に転身して、現在はテレビアニメのシナリオや、ドラマのプロットを手掛けています。

−本公演のほうはカンフー活劇ばかりだと脚本のネタに困ることはありませんか。
待田 普段見たり聞いたりしたことや、昔の映画をモチーフにしたりすることもあって、特に心配はしていません。シナリオの仕事の関係で資料の本を大量に読んだりもするんですが、それが芝居で役に立つことも結構ありますね。とにかく現状に満足したら終わりだと思っているので、いまのところ過去の作品を再演する予定もありません。

−稽古場の雰囲気はどんな感じなんですか。
待田 みんな負けず嫌いなので、お互いにほめたりすることはないですね。私はたまに気を遣って、うわべだけほめることもあるんですが、心の底からほめてるわけではないんです(笑い)。
石垣・大田・中澤 そうだったんですか(笑い)。

−今後の劇団の方向性については・・・。
待田 劇団は劇団としてやっていく一方で、一人ひとりが役者として幅広く活動するようになってもらいたいですね。そうなることで劇団自身も大きくなっていけると思いますので。シナリオライターの仕事の現場でも、うちの役者を売り込む機会を虎視眈々とうかがっているんです。逆に、役者のほうから私にシナリオの話を持ってきてもらえるようになったらいいですし。

−劇団員を増やしていく予定はあるんですか。
待田 人数がいたほうが公演を打つときも楽ですし、いい人がいれば増やしたいんですが、あんまり多くなっても劇団員に対して、責任が取りきれないんで・・・(笑い)。
石垣・大田・中澤 そんなに正直にいわなくても・・・(笑い)。
(2005.3.13 東京・世田谷区奥沢のレストランで)

ひとこと>石垣さんは中国拳法で有段の「準師兄(じゅんしけい)」で、前回の本公演からは殺陣も担当。大田さんはお父さんが道場をやっている関係で剣道5段(ストレートで昇段)の腕前。中澤さんは算盤が準二級、漢字検定が2級で、脚本の難読漢字はすべてお任せだそうです。まさに「三人三色」の原作が織りなす今回の番外公演は、本公演とは趣向こそ違うものの、見応えの面では勝るとも劣らないものになることでしょう。(インタビュー・構成 吉田ユタカ)

 

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