<山田能龍さん、後藤隆征さん> 東京サギまがい・ゲツメンチャクリクvol.1「お化け屋敷の中〜断髪したライオン達〜」(4月27日-5月1日)

山田能龍さん(左)と後藤隆征さん
【やまだ よしたつ】1976年大阪生まれ。映画やテレビドラマなどに出演。劇団「東京サギまがい」副座長。今回は演出を担当。(写真左)
【ごとう たかゆき】1978年東京生まれ、埼玉育ち。タイガースファン。文芸部所属。今回は台本担当。(写真右)
webサイト:http://www.sagimagai.com/

 「小さな一歩から大きな歩みへ 若手自主公演が本格スタート」

―今回の公演は、本公演とどんなところが違うんですか。これまではダンカンさんの作で通してましたよね。
山田  平たく言っちゃうと、若手公演なんですよ。でも、サテライト的な意味合いが嫌だったものですから、ゲツメンチャクリク(月面着陸)公演と銘打って、別公演っていう風に仕立てました。実質何が変わってるかっていうと、おじさんたちがいない(笑い)。若手で脚本・演出を担当して、キャストもベテランの方はお休みして、見守っていただくという感じです。
―そうですか。前にも若手公演があったはずですけど…。
山田 1回あったんですけど、ダンカンさんが書いた昔の台本を、おれたちが演出したらこうなるっていう形で再演しまして、最終的なチェックも上の人がしていたんです。
後藤 今回は完全にオリジナルです。
―「ゲツメンチャクリク公演」のネーミングは?
山田 最初は単純に響きがよかったから考えましたが、月面着陸というと大げさですけど、人類の夢の第一歩という意味合いがあることかな。チラシのデザインも、ダンカンさんが地球になってて、月面を歩いている(宇宙服の)人物が若手たちなんです。月に行って、第一歩の旗を立てました、っていう意味のネーミングで、「ゲツメンチャクリク公演」っていう名前にしたんです。
―チラシには、旗が立っているのが見えますが。
山田 これは劇団のマスコットっていうんですか、鳥なんです。
後藤 もともとダンカンさんが描いたんです。
―鳥にもいろんな種類がいますよねえ。
山田 サギ。
後藤 そうです。
山田 サギ鳥です。最近、おれおれ詐欺が集団で現れて「詐欺劇団」って呼ばれてるらしい。だからわれわれが領収書を切りにくくなっちゃって大変なんです(笑い)。まあ鳥のマスコット自体は後付けですけど。
―そっか、鳥のことなのか。
山田 「サギ・まがい」だから、マイナス×マイナスのプラスじゃないですけど、本物だよっていう意味です。サギのまがいもんだから本物ですよ、っていうことだと思います。
―今度の公演は「お化け屋敷の中〜断髪したライオン達〜」というタイトルですけど、どういうお話でしょう。
山田 舞台はだめなお化け屋敷です。断髪したライオン達っていうのは、たてがみがあってなんぼのライオンの、たてがみがないっていう意味での断髪なんです。だから怖くないお化けたちを言い換えた言葉です。経営不振のお化け屋敷に、敵対する人たちが来る、お化け屋敷を助けようする人たちもくる。さてどうなる、っていうお話です。
後藤 今のお化け屋敷ってどこいってもみんな機会仕掛けじゃないですか。SFチックだったり照明効果もそれらしかったり。でも昔は、人間が実際にお化けに扮したりしてやっていた。皆で話してるうちに、こんな奴がいたら、お化け屋敷での“お化け”というコトに勘違いした連中がいたらっていうとこから始まりました。
―本公演はダンカンさんの書き下ろし作品で、ハートウォーミングなコメディーになっているようですけど、皆さんの今度の作品はどんな特徴があるんですか。
山田 僕らはダンカンさんの下でやってきたから、どのみちダンカンさんの影響は隠せないと思うんですよね。だったら、できるだけそうじゃないことをとりあえずはやってみよう、大きな口をたたくと、ダンカンさんのできないことをやろう、としているんです。本公演の縮小版になるのが一番怖い。本公演の縮小版になりたくないと思っているんですが、結果的にダンカン色は出てきますね、稽古場でも。
―ハートウォーミングなものと、ちょっとニュアンスが違ったものに仕上がるということですか。
後藤 いや、ハートウォーミングな特色は大事にしなきゃいけないと思うんです。
山田 結局はハートウォーミングなんですけど、本公演だったらきっちりハッピーエンドで終わるところを、もう少し現実的な結末っていうか、軽い白旗というか、あっけらかんと白旗振るみたいな感じです。
―何人くらい出演するんですか。
山田 メーンが10人ぐらい。あとほかに5人ぐらいですね。
―そうですか。オープニングで何か仕掛けがあるんですか。
山田 うちの普段のオープニングは、すごく尊敬しているんですけど、吉田拓郎の曲だとか、えーと、ダサかっこいいみたいなものが多いんですよね(笑い)。今回はそうじゃなく、バーンと派手に、ダンスと映像で、キャストの動きを混ぜた紹介みたいなことをやろうかなと考えてます。
―吉田拓郎が趣味というのは。
山田 いや、僕らも好きですよ。
後藤 ダンカンさんが昔から好きで聴いているんですが、世代的に僕らは吉田拓郎をあまり知らない。でも改めて聴いて好きにはなるんですけど、毎回拓郎さんの曲が流れるわけじゃないですよ。
山田 ダンカンさんも最近の曲も良く聴いてて、ハイロウズも好んで聴きますね。
―ハートウォーミングですよね。
山田 ハートウォーミングですね。
―登場する方皆さん、東京サギまがいの方ですか。
山田 今回客演で、松本渉と望月さんの2人は客演です。あとは劇団の若手。ちょっと前にオーディションしまして、何やら知らんけどサギまがいに騙された人たちが大勢出ます。
―はははははは。
山田 その人たちを、さっき言った本役じゃないところに入ってもらうという感じですね。
―皆さん劇団のメンバーは最初からいらっしゃる方が多いんですか。
山田 いや、古いのは僕と大出雅也という初期からのメンバーです。
―劇団はいつごろから活動していたんでしょう。
山田 1998年ですね。当時はプロデュース公演の形で、制作がサンミュージックの方でした。既に方々で活躍している芸人さんや役者さんを集めて、年2回の形でスタートしました。そのときに参加してたのが僕と大出なんです。それは5回限定と決めてたんです。5回目の公演が終わったとき、やめるのはもったいないという声をいただいて、じゃあ劇団にしよう、ということになり、オーディションもしました。そのときですね、初めて劇団員が生まれたのは。
―それは何年くらいですか。
山田 2001年ですから、もう4年たちました。
後藤 僕は文芸部で、役者志望ではないんですけど、ダンカンさんの脚本の手伝いをしてくれる人を募集、とホームページに書いてあって参加しました。芝居に興味はほとんどなかったんですけど、そのころタイガースファンになって、ダンカンさんはタイガース好きなんだなあと思って、それでたまたま入ったんです(笑い)。
―山田さんはどういう形でここに入ってきたんですか。
山田 僕は最初サンミュージックにいて、当時プロデュース公演の座長をやってた人が、ひょろ長いのが足りないっていうことになって、横の稽古場にポコッときて「おーい、えーと、おまえ」って言われて行ったらダンカンさんがいて「あー次やってくれー」って言われて、実際やったらそんなに難しくなかった。そしたら「うん、じゃ、出てねー」。そこからですね。
―ずいぶん簡単でしたね。
山田 簡単でしたね、ええ(笑い)。
―山田さんは副座長ですか。
山田 そうです。2年ぐらい前からやってます。
―後藤さんは台本担当ですが、ステージに立ったりしないんですか。
後藤 たまにありますよ。
山田 ダンカンさんの希望で、全身を真っ黒にして一瞬出たりとか(笑い)。
後藤 それが初舞台かもしれないですね。撃たれてすぐまた戻っていく瞬間的な役が多いです、はい(笑い)。
―山田さんはこれまで何度か演出を担当されていましたか。
山田 本格的な演出は初めてです。助演に近い形ではやってますけど。ずーっとコントをやってたんで、コントを作っていくという感じではありました。初演出なので、やりたいことは無限にあるんですけど、そこを舞台装置の専門家や照明のプロの方が、どんどん現実的なことを言うんです。おれたちの仕事は演出家の夢を現実に引き戻すことだって。でも僕は抗いますよ。逆におもしろいなって今思ってきてるんですけど、タイニイアリスのような、それほど広くない空間で何ができるか、苦労しました。いまはちょっとずつ見えてきたかなあ。
―この公演を通じて、皆さんはどういう方向を目指していくんでしょう。
山田 やや個人的なことですけど、僕は役者業で少し仕事がもらえるようになってきた状態なんです。ダンカンさんが昨年映画を撮って、そこにメーンキャストではめてもらった。それがきっかけで、ちょこちょこ仕事がもらえるようになって、これは今は外に向けて自分を発信する時期だと思った時に、後藤が若手公演やりましょうよって、内向きのベクトルを引っ張ってきた。だから最初はどうなんだろうと思ったけど、やりたいっていうのもあるし、もちろん役者業やりつつ、演出もやってみたかった。ましてダンカンさんの名前のある劇団でやるわけだし。あと若手演出家コンクールみたいなのにもでたいと思いますね。
―後藤さんは?
後藤  毎年ダンカンさんに言われるんですけども、本公演、おまえが書かなきゃだめだ、って。それで挑んでホンを書いています。この劇団がダンカンさん一色だけでなくて、(山田)能龍さんの色だったり…。
山田 ゲツメンチャクリク公演を、伸ばしていきたいって気持ちがありますね。本公演もこちらも、どっちもおもしろいというふうに。
(東京・杉並区の稽古場、2005.4.3)

ひとこと>山田さんはサッカーのガンバユース出身のスリムな好青年。身のこなしも軽そうで、話もてきぱきしています。後藤さんは風貌がなんとなくダンカンさんに似ていますね。ほんわり温かな人柄が伝わってきました。2人をはじめ、若手メンバーのステージが楽しみです。(インタビュー・構成:北嶋孝@ノースアイランド舎、鈴木麻奈美)

 

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