<谷口有さん、あおきけいこさん> タッタタ探検組合「ハイパーおじいちゃん3 おじいちゃん月へ行く」(3月1日-4日)
「 超高齢化社会型ヒーローがシリーズ締めくくりの大活躍」
谷口有さんとあおきけいこさん

谷口有(たにぐち・たもつ)
1968年、大阪府生まれ。山口大学演劇部OBを中心にタッタタ探検組合を98年結成。99年旗揚げ公演。主宰。経営コンサルティング会社勤務。
あおき・けいこ
1973年、大阪府生まれ、川崎育ち。日本女子体育短期大学舞踊専攻卒。某劇団研究所を経て、旗揚げから参加。
タッタタ探検組合webサイト: http://www.tattata.com/index1.html
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−結成が1998年、旗揚げが99年とありましたが、随分公演回数を重ねているようですね。
谷口 最近は回数を数えるのをやめてしまったんです。年に2回か3回公演するのでかなりの回数ですね。
あおき 今度で17回ぐらいかな。

−ネットで調べたら、「新宿・池袋を中心に活躍する千葉の劇団」というフレーズが出てきました。題材に千葉県周辺のお話が多いんですか。
谷口 市川を題材にしたお話は1回かな。千葉の話題はちょこちょこネタに出てきても、私が船橋に住んでいるというだけで、それほど関係ないと思います。ただ「劇団歌」、正確には「組合歌」には(笑)「船橋駅から総武線に乗って…」とあります。事務所が、と言っても私の自宅ですが、船橋にあるのでそうなっていますけど。

−エーッ、劇団の歌があるんですか。
谷口 はい、たまたま(笑)。ホームページで聞けるようになっていますよ。お芝居の始まりと終わりに流れます。

−そのうち、劇団旗なんかを作るんじゃないでしょうね。
谷口 旗もありますよ。

−エーッ、もうあるんですかあ。なんという劇団だ(笑)。
あおき スタッフの方に恵まれて、ボランティアでやっていただいています。
谷口 劇中の挿入歌も全曲オリジナル。すばらしいでしょう。劇団の売りでもあるんですよ。音楽監督の方が作曲していて、劇団歌も彼女の作曲です。あと映像も使いますが、専門家が参加して制作していてます。ウチのスタッフは超優秀だと思います。

−どういう方々が結成したのでしょう。
谷口 もともと私とあと二人は山口大学演劇部のOBです。上京していたOBメンバーだけで旗揚げしたのがタッタタ探検組合の前身の劇団でした。ところが座長が転勤で名古屋に行ってしまって劇団が事実上崩壊したので、私が座長になって立ち上げ直しました。その後客演などで知り合った役者に声をかけて一緒になったのがいまのメンバーです。

−劇団のwebサイトに「思い切り笑えて、少しだけ泣ける。観終わった後、なんだか元気になっている。そんなお芝居を目指しています」と書かれています。発足当初もいまも、この基本は変わりませんか。
谷口 学生時代は当時流行していた第三舞台や夢の遊民社などの作品を取り上げていましたが、社会人になってから始めたオリジナル作品は、その路線で続いています。

−東京で芝居を始めると、込み入ったり難しい作品を上演しがちになりますが、いまの作風はどんなお考えから出てきたのでしょう。
谷口 たまたま東京近辺に就職した先輩たちが軽い気持ちから、趣味の延長で始めたようです。ぼくは後輩だったのであとから誘われました。あと舞台に立つのは社会人メンバーが多いので、見に来てくれるお客さんも同世代のOLやサラリーマンですから、あまり小難しい話でもないだろうということで、いまのような舞台が続いてきました。

−作は牧島さん?
谷口 はい、私の1年先輩です。

−みなさん仕事が別にあると、本業に差し支えはありませんか。本名なんですか。
谷口 本名です。原則として芸名は使わないようにしています。1人、精神科医がいて、さすがに仕事が仕事なので本名は出していません。ほかに銀行員、製薬会社の研究員、不動産業、植木屋、ぼくも前は銀行員でしたが、いまは保険会社の仕事をしています。あと看護師さんかな。
あおき ですからメンバーの平均年齢が高い(笑)。
谷口 お客さんもそれなりの年齢だから、客席に子どもがいたりします。
あおき 私の世代は子どものいる人が多いから、連れてきますね。
谷口 稽古場に子どもを連れてくるメンバーもいるので、周りにいてもあまり気になりません。というか、その子どもたちにも喜んでもらえるように工夫しています。子どもが笑うと、客席も和んでくるし、雰囲気が違ってきますから。

−なるほど。劇団のwebサイトを読むと、今度の芝居は半導体と合体したおじいちゃんのお話のようですね。番号が付いているところを見ると、シリーズものなんですか。
谷口 はい、このシリーズ3作目です。第2回公演「ハイパーおじいちゃん」(1999年)が最初ですね。ウチではシリーズものが何本かありますが、そのなかでも人気のあるシリーズです。これはおじいちゃんが仮面ライダーみたいに1人で悪と戦うというヒーローものですが、もう1本は赤レンジャーが何人かいるような感じ。また別のシリーズは、地球温暖化が共通テーマです。
あおき ハイパーおじいちゃんシリーズは、高齢化社会の老人問題を盛り込みながら、おじいちゃんヒーローがにぎやかに活躍します(笑)。地球温暖化シリーズは、主人公が野鳥を数える会の会員なんです。
谷口 老人問題や環境問題が一応それぞれのシリーズのテーマにはなっています。

−おじいちゃんヒーローが毎回、悪役をやっつけるお話のようですが、今回の敵役はどんな人物なんですか。
谷口 今回は不老不死になるための料理を作っている人物です。そのために誘拐事件が頻繁に起きる設定なんですが、ヒーロー型活劇ですから、この年でも動きは割に激しく(笑)。ときどきケガすることもありますね。
あおき それなりに年を取った役者が汗をかいている舞台は見応えがあるかと。若い人が跳ねたり飛んだりするのとは訳が違う(笑)。

−みなさん、まだ30代でしょう。
谷口 メンバーの平均年齢は36歳。最年少が27歳、最高齢が49歳かな。

−まだまだ。老人ホームじゃ60−70歳代は若者。80歳にならないと一人前に扱ってもらえない(笑)。ある老人クラブでは、60代は「青年部」所属だって言いますから(笑)。超高齢化社会型ヒーローの芝居なら、それぐらいの心意気で頑張りましょう(笑)。
あおき 普通は就職したり結婚したり子どもができたりすると芝居を離れることになりがちですけど、私たちは劇団の旗揚げの時から結婚していたり子どもがいたり、会社に勤めていた人が多かった。だからその問題は最初からクリアしている。逆に「やめどき」が分からない。みんな70歳ぐらいまで芝居を続けるのかな(笑)。

−どんな運営を心掛けているんですか。
谷口 勤めを持ってますから、稽古は休日と平日の夜にします。公演期間中も会社からお客さんと一緒に劇場に入る人もいるんですよ。無理はしないようにはしていますが、各家庭にそれなりのひずみが生まれてるかもしれませんね。

−最初のころと作風は変わってきましたか。
谷口 ハイパーおじいちゃんはシリーズ1から2になるまで30年、次は40年という歳月が経ったという設定です。本人は半導体と合体しているんで年を取らないけれど、周りの人たちが年を取って、子どもが大人になり、その子どもがまた大きくなるなど代替わりしたりしているんです。

−若い人が入っても対応できますね。
あおき そうですね(笑)。それで雰囲気は掴みやすいし、演じやすい設定になってます。

−劇団員の活動は。
谷口 劇団は趣味の延長でスタートしましたが、やってみると志は高揚する一方なんです。最初は4人、そのうち若いメンバーも入って来て、抱えるものがだんだん増えてきますから。いまは本気ですよ。これで食っていけるようになったら、みんな仕事を辞めるんじゃないかなあ。劇団が売れることが基本ですが、客演に出たり、遅まきながらCMやテレビ番組のオーディションを受けたりするようになりました。

−作品の方向や中身はミーティングで話し合いますか。
谷口・あおき そうです。
谷口 今回は作者の牧島が「ハイパーおじいちゃんで行こう」と言い出しましたが、ときにはプロットを10個ぐらい持ってきて、どれがいいか話し合いの上、多数決で決めたときもありました。

−あおきさんはどんな経緯で参加したんですか。
あおき 旗揚げからのメンバーですが、他の3人は山口大OBですけど、私だけ別。もともとダンスをしていたんですが…。
谷口 彼女はたまたまぼくが客演した劇団に踊りの振付で来ていたのが縁で参加することになったんです。
あおき 当時は同じ大学卒、会社勤めの男性3人とは話について行けないときもありましたが、その後は新しいメンバーも増えて私もいい年を重ねてしまった(笑)。最初は劇団の俳優養成所に通って、それから舞台に立ちました。演技を習う、というところからスタートしたので、演劇は難しいことをするという感じでしたが、大学の演劇部で芝居を楽しむという雰囲気を知らずに過ごしてきたから、「山口組」に出会ったとき(笑)最初はショックでしたね。大丈夫かなとも思いましたが、結局そういうお芝居は自分も楽しいし、お客さんも楽しんでくれる。これでいいかな、と思うようになりました。この劇団は見てくれるお客さんも普通に働いている人が多いし、近くにいる人に見てもらっている感じです。

−これからは。
谷口 ハイパーおじいちゃんシリーズは今回が最終回の予定なんです。ぼくらもそろそろ身体が動かなくなってきたし(笑)。
あおき 全員タイツ姿で動き回るんですよ(笑)。それには体力が必要なんだけど、みんなだんだんガタがきている。大きすぎると大変だから、タイニイアリスぐらいの大きさがちょうどいいのではないでしょうか(笑)。

−ありがとうございました。
(新宿2丁目の喫茶店 2007年1月24日)

ひとこと>  学生時代の演劇経験を基に、社会人になってから劇団を結成し本格的に活動してきた人たちが中心です。メンバーの平均年齢も30代後半。インタビューの受け答えには余裕を感じさせる真剣味というか、熱意とともに腰の据わった落ち着きが感じられました。若い感性が導く実験空間もワクワクしますが、大人のエンターテインメントにも捨てがたい味わいがあります。多様な芝居が刺激し合ってそれぞれ隆盛するのが厚みのある演劇空間を作るのではないでしょうか。公演が楽しみになりました。(インタビュー・構成 北嶋@マガジン・ワンダーランド)

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