<ニシオカ・ト・ニールさん、大内涼子さん>カミナリフラッシュバックス番外ライブ「人見知り」(3月8日-9日)
誰もが楽しめて元気が出る 「エキセントリック、エネルギッシュ、人情芝居」
ニシオカ・ト・ニールさん、大内涼子

ニシオカ・ト・ニール(西岡知美)  札幌市生まれ。札幌での演劇活動を経て上京。ENBUゼミ(村上大樹クラス)の卒業生らで2004年にカミナリフラッシュバックス結成。以来、5回の公演の作・演出を担当。(写真左)
大内涼子(おおうち・りょうこ) 千葉市生まれ。劇団MerryMakers公演に参加。TV『稲妻ロンドンハーツ』コーナーレギュラーとして一年間出演したあと、ENBUゼミ(村上大樹クラス)で学ぶ。カミナリフラッシュバックス結成に参加。以後、全公演に出演。
Webサイト:http://kaminari-fb.main.jp/

▽ENBUゼミが出発点

−ニシオカさんの名前はちょっと変わってますね。
ニシオカ ペンネームというか、ニシオカ・ト・ニールって、ちょっとかっこいいじゃないですか。

−ラテン系ですか。
ニシオカ テンションの高い人かな(笑)。ト・ニールって男か女かわかんない感じがミステリアスでいいかなあって。もともとトニーというのが私のニックネームだったんです。本名の知美(ともみ)からそう言われたんだと思いますけど、高校時代の友達があるとき「ト・ニール」って言い始めたんです。それを凄く気に入ってしまい、ペンネームにしました。

−カミナリフラッシュバックスはENBUゼミ(村上大樹クラス)のメンバーが集まって旗揚げしたようですね。
ニシオカ 私はもともと札幌でupspeaks という劇団で活動していました。その後東京に来て、ENBUゼミに参加。そのクラスの人たちとカミナリフラッシュバックスを結成したのが2004年8月です。

−札幌での活動では満足できない面があったのですか。
ニシオカ 札幌で参加していたupspeaks は、TEAM NACSのメンバーの安田顕さんがリーダーの劇団でした。そこが解散する少し前から自分でカミナリゴーゴーズという劇団を始めましたが、やはり世界が狭いと感じて、そこのメンバーだった子と上京して、その子が「東京で演劇を勉強するならまずENBUゼミだろう」というので入ったんです。割に単純というか(笑)演劇や演技の勉強もそれほどしてなかったし、知り合いも多くないから、ともかく勉強しようと思いました。

−大内さんはENBUゼミでニシオカさんと知り合ったのですか。
大内 ええ、そうです。私は東京で事務所に所属したり劇団で活動したりしてました。たまたまテレビ番組のオーディションに受かって、演技とかの基礎力もないまま1年間レギュラー出演することになってしまった。番組が終わって劇団に戻って、宮沢章夫さんの遊園地再生事業団公演のオーディションを受けたんですが、最終選考で落ちてしまった。出る気満々だったんですけどね。やっぱり力が足りないと感じてENBUゼミで勉強しようと思ったんです。

−どういう公演のオーディションでしたか。
大内 「トーキョー・ボディー」だったと思います。遊園地再生事業団が活動再開した最初の作品ですから。

−散文詩のような断片的なテキストが映像や音楽を交えて語られ、しかも身体表現が際だった舞台、という記憶がありますね。ところでオーディションではどんなことをしたんですか。
大内 街頭発表とか。前のグループの作品を見て、急遽15分で作り直したりしたので結局グダグダ(笑)。そんなことがあったので、ENBUゼミのカリキュラムをみたらちゃんと勉強できると思ったんだけど、勉強といっても結局自分でやらないとだめ(笑)。
ニシオカ 自分から積極的に努力して勉強しないと結局何も学べないんですよね。最初のイメージと違ってた。もっとぎらぎらした人がいっぱいいると思っていたら、最初の授業に出てきてそれきりいなくなるとか。

−そんなに安い授業料じゃないでしょう。もったいないですね。村上大樹クラスを選んだのは。
ニシオカ 前期でいろんな先生の授業を受けて、村上先生が気が合うというか、一番ぴったりすると思った。言葉の多い人ではなくて、演出のだめ出しの時でもぼそぼそ。だからかな、ホントのことを言っているという気がした。

−宮沢さんと似ている?
大内 声が低いところは似ているけれども、宮沢さんはわりに言葉が多い。いっぱいしゃべる(笑)。

−カミナリフラッシュバックスの旗揚げは…。
ニシオカ 2004年に「危ない土曜日」で旗揚げしました。そのとき一緒だった男性メンバーは声優を目指すと言って辞めました。

−二人がいじめたんじゃないかな(笑)。
ニシオカ、大内 ない、ない。それはない(笑)。うちらは本気で辞めるってことを知らなくて、彼のmixiの書き込みをみて「ああ、辞めるんだ」(笑)。今メンバーになっている加藤伸之丞は最近加入したばかりです。

▽毎回新しいことにチャレンジ

−旗揚げから作風はほぼ同じトーンで続いていますか。それともどこかで変わったりしたんでしょうか。
ニシオカ 基本的に人情芝居っぽいというか、昭和が大好きなんです。現代の人たちが登場するんだけど、ちょっとレトロな人物が多いんですよ。

−お二人とも平成生まれとか。
ニシオカ、大内 ない、ない。それもない(笑)。
ニシオカ 平成育ちといってください(笑)。これからお嫁に行くんです(笑)。

−「お嫁に行く」なんて、なんということをおっしゃる(笑)。「お嫁に行く」とか「入籍する」とか、戦前の古めかしい言い回しですよ。大好きな昭和の時代でも、結婚は両性の同意のみで成立するし、結婚は「入籍」ではなくて「婚姻届」を出すことでしょう。戦前民法の戸主制度だと、結婚する女性は戸主の許可を得て戸籍に入ったけれども、戦後の民法は戸主制度を廃止して、結婚する二人は夫婦単位で新しい戸籍を作ります。ご存じないところをみると、まだお二人は結婚経験がありませんね。
ニシオカ、大内 わー、いやだ。ばれちゃったかな(笑)。

−そういう話はさておき(笑)、みなさんの芝居はどんな特色があるのでしょう。ホームページによると、2007年の第5回公演「下宿屋、ロマンポルノ」はボロボロの下宿屋に住む3人の女子が男を追いかけたり他人をだましてまでも幸せになろうとするお話、2006年の第4回公演「復刻!GS〜グループサウンズ〜」はおんぼろスナックを経営する天真爛漫な母とグループサウンズばかりを聞いて育った思春期の息子のお話だそうですね。その前は「女子プロレス」のお話。話題性に富んだ舞台のようですが、「エキセントリック、エネルギッシュ、人情芝居」がモットーだと書かれていますね。
ニシオカ そう聞いただけでは何のことかわからないと思いますが(笑)、コントやパフォーマンスを交えたりしますけど、老若男女だれでも楽しめる芝居を目指しています。日本昔話ってあるじゃないですか。見たり聞いたりするとみんなが懐かしく思い出されるようなお話ですけど、それと同じように、みんなで盛り上がったり元気が出たりするような舞台が作れたらいいなと思います。おじいちゃん、おばあちゃんがみても楽しんでもらえる芝居をつくりたいと思っているんです。

−これまでの公演は「危い土曜日」「男まつり」「女子プロ」「復刻!GS〜グループサウンズ〜」「下宿屋、ロマンポルノ」と来て、今度の番外ライブのタイトルは「人見知り」。ちょっとテンション下がり気味ではありませんか(笑)。
ニシオカ 今回は初めてコントライブなんです。大きな話の筋はもちろんありますが、短いコントを次々に注ぎ込んでいく、ライブ感たっぷりの、生ものっぽい感じが出てくると思います。2,3人のコントもあれば、大人数のもある構成にしようと思っています。あまり説教くさいことは言えないので、見終わった後、世の中っておもしろいなとか、ともかくがんばろうと思えるようになってもらえたらいいなあと思います。

−いままでの舞台も、そういう元気の出る芝居だったんですか。
ニシオカ そうですね。だいたい女の子が出ていて、楽しくておもしろいことをして、元気が出てくるような話にしたいと思っていました。それから客演の役者さんが中心ですけど、毎回何か新しいことにチャレンジしています。前回はダブルダッチっていうんですけど、縄を2本使った縄跳びに挑戦しました。無理矢理やらせてしまった(笑)。その前はバンドつくって演奏しちゃった。私はベースに挑戦して演奏しましたよ。

−すごいですね。
ニシオカ 「女子プロ」のときは一応、プロレスを習いに行きました(笑)。

−今回は?
ニシオカ 今回は番外編なので、すべてが挑戦です。出演者はほとんどが初対面です。1ヵ月半の稽古で仲良くなって、一つの舞台を作り上げるというものチャレンジですね。

−ニシオカさんの演出はどんなですか。
大内 だめ出しと言うより、雑談が多いですね(笑)。メンバーのチャレンジも結構いきなり発表されて、みんなで2ヵ月ぐらいクタクタになってしまうほどやる。前回もダブルダックの技は東大のサークルの人たちに教えてもらったんですが、彼らに聞くと、技を覚えるのに普通は半年ぐらいかかるらしいんです。だけど無理を言って2ヵ月で教えてもらいました。女子プロのときも、格闘技なんかまったく縁のなかった二人がやっちゃった(笑)。

▽原点に戻って再出発

−今回は出演メンバーがかなり変わったそうですね。
ニシオカ 前回も客演の役者さんたちがずいぶんがんばってくれて、舞台はとてもうまくいったと思っています。顔なじみの人もいたし、信頼していた人たちだったんです。そういう環境に甘えず、逆に言うと、だから今回は新しい人たちと出会って、もう一度挑戦という気持ちを忘れないで舞台を続けたいと思ったんです。原点に戻ってやり直したいと思ったんです。楽しんでやるのもいいんですけど、演劇は苦しんでやるものというイメージが私の中では強い。種を明かすと、それが「人見知り」という芝居の出発点なんです。

−ニシオカさんは厳しいね。
ニシオカ そうでもないんですけど(笑)。でもお互いがライバルとして、もっと切磋琢磨していきたいと思っているんです。さっき言ったんですけど、みているお客さんがもっとがんばるぞ、と思えるようなことなら、芝居だけでなくて、バンドの演奏でも路上のパフォーマンスでもなんでもやっていきたいですね。

−路上パフォーマンスですか?
ニシオカ キャットファイトっていうか、路上の女子プロレスというか、手っ取り早く言うとケンカを見せるんです。ジャージを脱がし合うとか(笑)。去年6月「女子プロ」公演の宣伝のためにやったのが始まりです。代々木公園で毎週日曜日にちょくちょくやってました。でも夏になったら暑いからやめよう(笑)。冬は寒いからやめよう(笑)。

−これからどんな活動をめざすのでしょう。
ニシオカ 模索中ですね。今回は番外ライブで、9月には本公演が決まってます。昔のアニメの劇場版を上演したいと思っています。1970年代に「アパッチ野球軍」という放送禁止用語がいっぱい出てくる漫画があって、それがとってもおもしろい。アニメもネットでみられます。なんにも決まっていない割には、気合いが入っている(笑)。

−最後に言いたいことは。
ニシオカ だまされたと思って、公演を見てください、劇場に来てみてください(笑)。来たらきっと元気になれると思いますよ。

ひとこと>「エキセントリック、エネルギッシュ、人情芝居」がモットーだそうですが、二人と会って受けた印象は「楽しく、ひたむきに」というイメージでした。舞台に全力を傾ける姿勢が伝わってきます。コントライブは新しい出発点だと話していました。どんな舞台になるか楽しみです。(インタビュー・構成 北嶋@ワンダーランド)

>>戻る