<谷口有さん、牧島敦さん> タッタタ探検組合「超人スリムスリムマン〜フンドシ一丁の親善大使〜」(10月16日-19日)
同世代に発信する冒険活劇
鈴木厚人さん

谷口有(たにぐち・たもつ)1968年、大阪府生まれ。タッタタ探検組合主宰。同劇団の役者、演出の顔も持つ。経営コンサルティング会社勤務。(写真 右)
牧島敦(まきしま・あつし)1967年生まれ。タッタタ探検組合脚本家。製薬会社勤務。谷口とは山口大学時代からの仲。(写真 左)
[写真提供・タッタタ探検組合]
劇団公式サイト:http://www.tattata.com/
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−本日は稽古見学までさせていただいてどうもありがとうございました。稽古中は谷口さんと牧島さんの両方が役者に指示を出していましたね。
谷口 共同演出です。牧島が脚本を書いていて、僕はどちらかというと役者寄りの視点からアドバイスをしています。役者で出演しているということもあるけど。大学時代からだから付き合い自体は22年ぐらいになります。

−22年も共同演出をされてたんですか。
谷口 いえ、別の劇団に所属していた時期もあったので。付き合い自体は長いですけど。

−もうひとかた、意見を仰いだ方がいらっしゃいませんでしたか。
谷口: 石動良さんは、タッタタ探検組合の監修として入ってもらっています。彼もどちらかというと役者寄りのアドバイスをしてくれます。もともとは劇場関係者だったんですけど、劇場のイベントにタッタタ探検組合が参加したときクソミソに言ってきた人なんですよ。じゃあそんなに言うんだったら稽古場来て、アドバイスしてくれって。

−好意的に見てくれた人ではなくてけなした人が監修なんですか。
谷口 僕は仕事で営業経験が長いせいもあるんですけど、感じのいい人ってあんまり信用できないところがあって(笑)。今保険の仕事をしてるから特にそうなのかもしれないけど。感じ良く迎えてくれる人って、誰にでも感じ良いから、商売にならないみたいなところがある。それより「何で来たんだ」って言うような人を落とす−「落とす」って言い方は良くないかもしれないけれど、攻撃的な人のほうが、仲良くなったときに強いつながりになる。今石動さんは劇場は辞めて、タッタタの監修一本です。いつも手厳しいこと言うんですけど、今日は機嫌良くて怖いな(笑)。

−稽古の進み具合はいつもと比べていかがですか。
谷口 順調です。台本が今、全体の半分ぐらいかな。
牧島 そうだね。

−お勤めしながらだと稽古時間の捻出は大変だと思うのですが。
谷口 時間の融通が利く仕事に就いている人が多いですよ。僕も保険の仕事に就く前は銀行員でした。

−そうなんですか。牧島さんも?
牧島 僕は、製薬会社で研究をしています。
谷口 牧島は平日は来られないんですよ。土日だけ。メンバーによってスケジュールが違うので平日は全部抜き稽古です。今回は出演者の半分が客演さんで、客演だとフリーターの人もいたりするので、劇団よりも時間の都合がつく人が多かったりしますけど。

−今回立ち稽古と新しい場面の読み合わせをやっているところを拝見しましたが、ト書きの細かい台本なんですね。役者の動きの指定までされてるんですか。
牧島 書いているときに、役者の動きをイメージしないと書けないので、自分で舞台を思い浮かべられるようにト書きを細かく書いています。

−それをそのまま役者に手渡しているわけですか。立ち稽古と読み合わせとで随分印象が違いましたが。
牧島 あ、稽古の段階で変わっていく分には構わないんです。どんどん変えてもらって。
谷口 舞台に上がったら、役者には自由にやってもらってますよ。けっこう皆好き勝手やってます(笑)。のびのびと。僕も出てるし。

−「文句を言われるのに構わず問題を出し続ける」など、かなり小説的なト書きもありますね。
牧島 そうですね。読み物としても面白いような脚本を書こうと思って書くようになりました。
谷口 ト書きは増えましたね。
牧島 昔と比べたら増えました。三、四年前ぐらいからかな。特にこれといったきっかけは無いんですけど、役者が読んで、ああ面白いな、と言ってもらえるように。

−戯曲がどこまで文学かについてはいろいろな意見があると思うのですが、牧島さんはどうお考えですか。
牧島 んー……戯曲は、台詞だけで世界を作っていくから……小説は、台詞じゃない部分がたくさんあるじゃないですか。「〜と言った。」みたいな。主人公の心理が何行も書いてあったり。戯曲は完全に会話だけで全部表現するから、そこが違うと思います。

−牧島さんのト書きは小説の描写部分に匹敵する書き込みようだと思うのですが。
牧島 今回の「スリムスリムマン2」は、かなり物語性が強い話なので、会話もあるけど全体の大きな物語を動かしていくことを優先的に考えています。ト書きは、さっきも言ったみたいに舞台上でどんどん直していっていいんです。小説っぽいところが伝わらなくても。劇は、やっぱり役者のライブ感が大切だと思うから、舞台上の役者の勢いで、大きな物語を動かしていってほしい。
谷口 お客さんで、リピーターの方は、僕らと同じぐらいの人が多いです。年齢層高いですね。お話が面白いって言ってくれるお客さんもいるし、自分と同じぐらいの年齢の人が舞台でこうやって頑張っているっていうので、元気が出ましたみたいに言ってくれる人もいますよ。
牧島 今回は続編なんですが、初演のときは今ほど食糧危機が一般の人達に知られていなかったので、今は多少変わってきているかもしれないけど。

−観客も役者も社会人と演劇人の両方の顔を持っている感じでしょうか。
谷口 僕の場合だと、仕事のストレスを芝居で解消して、芝居のストレスを仕事で解消して、みたいな感じです。両方でバランスとってるみたいな。どっちかがいいとどっちかが悪かったりとかけっこうありますね。

−仕事と芝居を両輪にして活動しているわけですね。ありがとうございました。最後になりましたが、小説家でお好きな方はいらっしゃいますか。
牧島 漱石が好きです。僕らは生まれていない、見たこともない時代の話なのに、惹きこまれる。今回も空想の世界のお話だけど、楽しんでもらえたらと思います。

ひとこと>稽古中、台本で指定されたキャラクターに基づいて役者個人個人は自由に動き、演出班も「キャラが立っているかどうか」を判断基準に指示を出しているように見受けられました。空想色が強い作品だから、と言うより、社会人としての自分を解放する役割を稽古場が担っているような気がします。同年代の観客が多いことを考え合わせると、タッタタ探検組合の芝居は「場の演劇」なのかもしれません。役者と観客の両方が、日頃の生活と全く異なった時間を必要としているように思いました。(インタビュー・構成 小畑明日香)

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