<齋藤裕人さん、渡辺エリカさん> 劇団CAT「ラヴとか。」(2008年12月25日-26日)
コメディーを力一杯フレッシュに 楽しんでもらって楽しみたい
小瀬幸一さん、にしむらゆみさん

齋藤裕人(さいとう・ひろと)
1987年北海道旭川市生まれ。高校卒業後、札幌で劇団「国境なき意志団」で演劇活動。さっぽろ演劇祭Fix Mix Max、ドコモ・北海道ショートドラマ、聖ロイヤル歌劇団などに出演。上京して今春から声優養成所に入所。2008年7月劇団CAT結成、代表。
渡辺エリカ(わたなべ・えりか)
1987年東京都品川区生まれ。ヒューマンアカデミー(声優専攻)卒。今春から声優養成所に入所。劇団CAT結成に参加。

−今度の公演が旗揚げと聞きましたが。
齋藤 はい、声優養成所の同期メンバーが集まって立ち上げました。

−これまでの演劇活動は…。
齋藤 僕は旭川出身ですが、高校を卒業して札幌に出て、高校の先輩から芝居をしないかと誘われて勧められたのが声優を目指す専門学校だったんです。そこで先輩が起こした劇団の活動を2年間続けました。その後もう少し深く勉強したいと思って上京して、いまの養成所に入ったわけです。札幌ではいろんな劇団に客演させてもらって、各劇団のメンバーがお祭りだけに参加する舞台で一緒になったり、そこで知り合ったメンバーの舞台に参加したりしていました。

−渡辺さんはこれまでどんな活動をしてこられたのですか。
渡辺 東京生まれです。今年4月に声優養成所に入るまで専門学校で勉強していました。いま劇団はメンバー5人です。出身も年齢もまちまちです。去年まで普通に会社に勤めて仕事していた人もいるし、舞台経験がなくて声優の勉強を始めた人もいたりします。

−養成所では声優の勉強だけですか。それとも演劇全般を教えてくれますか。
渡辺 演劇全般を教えてくれる時間もありますが、わたしたちは週2コマの授業ですので、1コマは声優の実技がメインです。舞台演技は2ヵ月に1度ぐらいかな。

−作者が「Sieglinde=Joachim Von Brecht」、演出が「家族猫」となってますね。
齋藤 実は僕たちの劇団は独立した演出担当がいなくて、全員が気付いたことを言い合っていこう、楽しくやっていこう、そこから基礎を固めようというのがコンセプトなんです。家庭にはよく猫の姿があったりしますよね。それと同じように稽古場に猫がいても不思議ではないように、メンバーがそんな家族のようになれたたらいなあと考えて、演出は「家族猫」と名付けました。
  作者の名前なのですが、じつは自分が書いた脚本をネットにアップできる「はりこの虎の穴」(http://haritora.net/)というwebサイトがあって、今回はそこに掲載されていた作品を使うことにしたので、作者名はその方の名前なんです。僕らが考えたわけではありません。

−有名なドイツのブレヒトは本名がEugen Berthold Friedrich Brechtなので、あまり関係なさそうですね。別人のBrechtさんが書いたのはどんなお芝居なんでしょう。
齋藤 完全なコメディー、今時の言い方をすればドタバタコメディーですね。ほとんどの文章がネタになっているような作品です。なかにアニメのネタも入っていて、声優を勉強していることもあって、せっかくならこういう作品もいいのではないかと考えて使わせてもらうことにしました。
(注)タイニイアリス劇場webサイトの公演紹介は次の通り。
  あらすじ−ひとつの会社が岐路に立たされていた。その名は「杉本商事」間抜けな社長と気合いだけの女子社員、そして唯一まともそうな男子社員という貧相極まりない零細企業である。倒産を目前に彼らがとった行動はなんと「神頼み」。しかし神などいるはずもなく現れたのは…。笑いあり涙ありラブあり(?)のドタバタコメディーここに完結!!

−どんなお芝居を目指しているのですか。
齋藤 まず楽しんでやるのが大前提で取り組んでいます。お芝居は娯楽だと僕は思っているので、お客さんに楽しんでもらう、それと同時に僕たちも楽しむことも大事だと思います。楽しむと言っても、自分たちが楽をする、楽しければいいということではなく、ちゃんと要点を押さえた上で、自分たちがめいっぱい楽しめる、挑戦できるという方向性でこれから固めていきたいと思います。
  旗揚げなので、それぞれがやりたいことをやってみようというのが第1回の舞台のコンセプトです。今回、自分たちの舞台をどう見せるのか、どう見られるのか。そこから今後のあり方につなげていきたいと思います。
渡辺 旗揚げ公演はスタートダッシュだと思うんです。演劇経験のない人が多いこともあるんですが、まず自分はこの役でこういうキャラクターを表現したいとか、見に来た人にここを見せたいとか、それぞれ考えることがあると思うので、まずそこから始めようと思っています。これから伸びていきたい、そうなれるようにやりたいと思います。もう一度、わたしたちの舞台を見たいと思ってもらえるようにやってみたい。フレッシュに力一杯やって、お金と時間を使ってきていただいたお客さんにまた来てみたいと思ってもらえるようにがんばりたいです。

−5人のメンバーがそれそれ精一杯やっていくということですが、配役とか演技などで互いにぶつかったりしませんか。
齋藤 結構ありますね。例えば稽古中、自分だったらこうした方がいいと思うとか、各メンバーはそれぞれ自分というものを持っているのでぶつかるときはありますが、芯はきちんとあっても気持ちの素直な人が多い。だから僕がこうした方がいいのではないかと提案すれば、それじゃあとりえずやってみるか、とやってみて、でもやはり僕はこっちがいいとなれば、じゃあすり合わせてみよう、という形になりますね。その都度、新しい形が見えてくるので、一役者としてはおもしろいですね。

−年齢構成は…。
渡辺 最高年齢が25歳、一番若いのが20歳かな。でも年齢よりも、就職していたとかバイトしていたとか大学に通っていたとか、そちらの違いの方が大きいですね。様々な経験を持った人たちが集まったと思います。

−次の公演は考えていますか。
齋藤 来年、2回目の公演を考えています。今回コメディーなので、次回はシリアスなものを取り上げたい。この間の稽古でメンバーの特色が見えてきたので、この人ならこういう役をするだろうとか、あるいはこれが苦手だったんだとか、いろんなことがわかってくる。いろんな経験を積んだ人の演技の方が深みがあるんじゃないかと思ったり、次は一風変わった芝居、コメディーでないものにチャレンジしたいと考えています。

−今回はほかの方の台本に取り組みましたが、自分で台本を書きたいと思いませんか。
齋藤 僕は書いてみたいと思ってるんだ。
渡辺 わあ、そうなんだ(笑)。
齋藤 みんなには言ってないんだけど、書いてみたいですね。

−書き上げて「はりこの虎の穴」に載せたっていいじゃないですか。
齋藤 それはいいですね。考えてなかったなあ。
渡辺 なるほど。
齋藤 ぜひチャレンジしたいと思います。いいものが書ければ、ちょっとだけかもしれないけどお金が入るかも(笑)。

−タイニイアリスを使うのは…。
齋藤 腰を上げるのが遅くなって、つまり出遅れてしまって、日程をまず決めて会場を探したけれどもなかなか見つからなかったんです。たまたま運良くタイニイアリスさんが空いていたんで決めました。決めてから聞いたのですが、舞台をかなり柔軟に使わせていただけるので心強く思いました。

−でも勝手に壁を傷つけたり床をはいだりしちゃあダメですよ。
齋藤 渡辺 それはしませんよ(笑)。でもタイニイアリスさんを使用させて頂く事で劇団としてのチャレンジが出来ますね。

−劇団の名前はどうして付けたのですか。
齋藤 Can、Action、Teamの頭文字を取りました。
渡辺 まだアクションはしてないですけど(笑)。これから殺陣なんかもやりたいね、ということでアクション…。
齋藤 とにかく大きく、大きく動いていけたらと考えています。

−稽古場はどうしてますか。
齋藤 実は出遅れたこともありますが、知らないことだらけで公民館などは借りられなかったんです。いっぱいで。いまは代々木公園などの野外で稽古しています。寒くなるとちょっと大変ですけど、でも僕らはまだ若いですから。雨だと喫茶店でおしゃべりしたり、結構楽しいですよ。

−最後に付け加えることは。
齋藤 僕らは若いメンバーですから、いま自分たちが見せられるのは勢いと個々の持つ自由な表現ではないかと思っています。それだけは譲らないでやっていきたい。これは僕の持論ですが、役者には感覚で出来る人もいれば考えて出来る人もいる。それぞれ伸び方も違いますが、今回の舞台を経験して、周りのメンバーも含めてさらに一歩、前進できればいいなと思います。
渡辺 ともかく自分たちの可能性が見える舞台にしたいです。
−ありがとうございました。
(2008年12月5日、新宿・シアタートップス)

ひとこと> 自分たちだけで芝居に取り組み、すべてが初めてという体験をいま通過中のみなさんです。話を聞いているうちに、次々に現れる風景が新鮮に見えてきました。公民館などを借りられなくて屋外で稽古しているという話を聞いたときはちょっと驚きましたが、いまは稽古場を確保できたそうです。「通過中」の勢いとエネルギーで乗り切ったようですね。伸び伸びと、遠くまで跳んでほしいと思います。 (インタビュー・構成 北嶋孝@ワンダーランド)

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