<鈴木喜三彦さん>POSTER COVER(「ストロボパンク」10月29日-31日)

「だれかがだれかを追いかける物語 ビジュアルでも音楽でも楽しめる」

Poster Coverの鈴木喜三彦さん

【すずき・きみひこ】
1979年東京都生まれ。成蹊大の演劇サークルを経て、2003年10月に旗揚げ公演。趣味は映画、音楽鑑賞。今度が第3回公演。劇団員募集中。

−劇団名はどんな由来があるんですか。
鈴木 ポスターというビジュアル的なイメージと、すべてを包み込んでいこうというカバーという言葉を合わせました。音楽でもカバーって言うじゃないですか。ビジュアルでも音楽でも楽しめるっていうことを引っくるめて、ポスター・カバーと名付けました。

−旗揚げはいつでしょう。
鈴木 成蹊大学で演劇サークル「劇団ルースアプルズ」に入っていて、卒業した2003年10月に旗揚げ公演。最初から1人で始めました。

−1人だと大変じゃないですか。
鈴木 ええ、毎回、人集めに苦労してます。旗揚げの時は後輩が出てくれたんですけど、2回目からはゼロですね。インターネットの演劇掲示板は命綱と言っていいので、どんどん告知を出して募集しました。今回は前に出演してくれた人が声を掛けてくれたり、初めてのオーディションで選んだりしてます。それでも人集めは難しいですね。

−固定メンバーがある程度いないとつらいでしょう。
鈴木 そうですね。今回も稽古の中でストーリーを変えたりして対応しましたが、これという人は劇団に入ってほしいですね。

−1人で始めたのは、どういう理由でしょう。劇団制の束縛を嫌ったんでしょうか。
鈴木 考えが甘かった。仲間で固まると、内輪で終わっちゃうんじゃないかと思って、それなら最初からいろんな人と一緒にやれればいいと思っていた。1回目からどーんと行こうというもくろみでした。しかしオファーをかけてもかけても「ポスター・カバーってなに?」と言われて断られる。甘かったですかねえ。

−今回の公演はどんなお話になるのでしょう。
鈴木 元カップルが公園で待ち合わせ。2人とも未練があるけれど、最後にデートでに都内を回っていて、男性が映画館で写真を撮ると、映された人に写真を返せと言われて逃げるのが発端です。フリーマーケットでも密売で追われる人がいて…。誰かが誰かを追いかけるというストーリーです。
  群像劇をやりたかったんです。小劇場ではよく、大人数が登場してもあまり意味のない人物がいたりする。そうじゃなくて、登場人物がみんな物語に絡むようになればいいいなあと思ってました。

−いままでもこういう群像劇じゃなかったんですか。
鈴木 これまでは時間軸が同じでしたから、ちょっと飽きちゃったんですね。3回目は勝負だし、少し変わったことをしてみたかった。

−なるほど。どんなステージを目指しているのですか。
鈴木 ひと言で言うと、ポップでしょうか。内容は会話劇ですが、劇団に対する暗いとかつまんないとか、そういう偏見を取り払って、一般の人が見に来ておもしろいと思えるような、間口の広い舞台を作りたいと思っています。最終的には演劇と映画が同列ぐらいのレベルに持って行けたらいいですね。娯楽として、デートするときに、映画と同じように気軽に誘えるように、演劇の敷居をもっと低くしたい。

−なにかテーマを設定したりするのですか。
鈴木 ちょっと違いますね。ぼくの場合はまず、お客さんありきですね。人があってのお芝居じゃあないでしょうか。お客さんが楽しんでくれるのが一番ですね。

−セミナーや養成所の経験は?
鈴木 ありません。必要は感じてますが、もうここまで来ちゃったから(笑い)。もともと演劇をやろうと思ってなかったんです。高校時代に「ショーシャンクの空の下に」を見て、映画をやろうと思って大学に入ったんですが、映画研究会をのぞいたらあまりに暗くて、こりゃまずいなと(笑い)。演劇サークルに顔を出したら、脚本が書けるというので、じゃあ演劇でもと。消去法で始めたのが、ここまで続いてしまった。

−コンペなどに応募したりしてますか。
鈴木 必要だと考えてますが、その前にまず、劇団員を募らないと…。やっぱり役者がいないと書けないですし、難しいで。でも機会があれば挑戦したいですね。

−これまで1人でやってきて、やはり壁にぶつかったりするんでしょうか。
鈴木 やあ、難しいですね。思惑通りには進んでいるとは言えません。実際にやってみて、これほど裏方さんの力が強いとは思ってみませんでした。もう少し考えさせてほしいところも、てきぱきてきぱき進行してしまう。時間がないこともあるんでしょうし、プロなんだからしょうがないんでしょうけど…。小屋入りが好きになれませんね。こちらの想定がどんどん変わっていきますから。

−演劇はさまざまな人たちの力が合わさって実現しますから、演劇上のコミュニケーションが大切になりますね。
鈴木 意外に社会的な部分が必要とされますね。鍛えられました。
(9月27日、新宿の喫茶店)

<ひとこと> 落ち着いた物腰と口調が印象的でした。同行の友人がカメラを回してインタビューの様子を撮影、公演の一部始終を記録していました。新しい試みに、さまざまなサポートがあるようです。(インタビュー、構成 北嶋孝@ノースアイランド舎)

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