<飯田ゆかりさん> ドロップD「これからこいつと×××」(5月3日-4日)

山田能龍さん(左)と後藤隆征さん
【いいだ・ゆかり】  仙台生まれ、横浜出身、埼玉県在住。30歳を過ぎてから突然、芝居に目覚める。日本劇作家協会戯曲セミナーで別役実らに学ぶ。2004年7月、劇団相殺で連作コント「箸をかまえて」を公演。今回は初の単独公演。

 「ストーリーのある連作コント 単独公演で客席の笑いを再び」

−劇団の名前は…。
飯田 劇団ではなく、私がやるときのユニット名なんですが、「ドロップD」と言います。ブルースギターのチューニングで、dropped-Dというのがあるんですけど、レギュラーのチューニングから、6弦のE音だけが一音下がる。ベースがひとつだけ落ちてる、根っこがちょっとだけずれてる、っていうのが私の世界っぽい、みたいな強引な意味づけです(笑)。
−昨年は劇団相殺という形をとって、2人の作品を組み合わせた公演でした。手応えはいかがでしたか。
飯田 反応はいろいろでしたが(笑)、結構喜んでくださる方も多くて、よかったと思います。
−確か、劇作家の別役実さんもみに来てました。感想をおっしゃってましたか。
飯田 志の高さを感じると言っていただて、それがすごく励みになりました。
−よかったですね。
飯田 あと、もっと演出で壊していくところがあった方がいいんじゃないかとも言われました。そんなこともあって今回は演出を他の人に頼みたくて捜したんですが、意中の人のスケジュールが合わなかったり、いろいろ思うところもありまして、結局自分でやることになりました。
−前回は2人劇団でしたが、今度はひとり。
飯田 前回一緒に組んだ太田くんとは、描く作品の世界がそれぞれ違っていたので、わざわざ「相殺」と名付けて公演を打ったんですけれども、今回は自分の作品だけを提示して、お客さんにどうみてもらえるか確かめたかった。
−どんなお話でしょうか。タイトルは「これからこいつと×××」ですね。
飯田 最初のテーマはエロだったんです(笑)。段々テーマが変わってきてしまって、でもこのエッチっぽい匂いは残したいなぁと思って、そんな感じのタイトルにしました。でも、あまりエロくはないです(笑)。
−普通の芝居のスタイルなんですか、それともこの前と同じコント形式ですか。
飯田 この前と同じコント形式です。今回15本を次々に上演します。
−そうですか。
飯田 主人公の男が恋人に去られてから、いろんなことを経て、立ち直るまでもいかないんですけど、考え方をちょっと変えてみようかとなるまでのお話です。その間、ちょっとエキセントリックなコールガールや会社の先輩が絡んできたり、あと全く別のつながりで、今回卵がクローズアップされているんですが、その卵を巡る男女が出てきたりします。
−作品の作り方は、変わってきましたか。
飯田 いまはコントを次々につなげていく形がすごく気に入っていて、出てくるままにどんどんやってみようかなぁと思っています。
−ストーリー性のある方法論というか、連作小説のようなものでしょうか。
飯田 そうですね。流れのある、つながりのある形のコントですね。別個のものを単発でやるのではなくて、芝居のような流れがあって、それぞれのコントがつながって一つになる形態です。あまりやられてないと思います。
−コントは日本語に訳すと寸劇ですか?
飯田 そうですね。スケッチという言い方もあります。テレビのお笑いを連想される方がほとんどだと思うんですけど・・・オチだけを言いたいがためのものがテレビのコントだとすると、そうじゃなくて、おかしいニュアンスを持った話というかスケッチを重ねていくということになるでしょうか。
−前回もそうでしたね。
飯田 はい。別役さんの影響が大きいのだと思いますけれども。世間のいわゆるコントとはまた違ってもいいんじゃないかと思います。
−別役さんの影響が大きいといっても、飯田さんの作風は、乾いた笑いということでもないですよね。
飯田 そうですね。唇の端だけが持ち上がるような笑いではなくて、割としっかり、にやっと、あるいはにこっと笑える…。そんな感じでしょうか。別役さんには、作品的にというより、コントというものの捉え方、考え方にすごく影響を受けています。
−放送の分野で活躍したいとお考えでしょうか。
飯田 あります。何をしていいのか、分かんないですけど(笑)。
−前回の公演でいろんな人の意見や感想をもらったと思うんですが、今回新しく公演をするにあたって、力やエネルギーになるような、そういう言葉はありましたか。
飯田 いろんな意見はあったんですけれども、実際のところこぎつけるまでがすごく大変で、もう二度とやりたくないって思ってたんです(笑)。しかし舞台が始まって幕の間から見ていると、自分たちが稽古してきたものをみてお客さんが笑ってる。それが本当に幸せでした。こんな思いをもう一度味わってみたいと思いました。
−学生時代に芝居経験はほとんどなかったんですよね。
飯田 ええ、31歳まで本格的な芝居はみたことなかった(笑)。ものすっごく晩稲です(笑)。
−その時にみた芝居は?
飯田 加藤健一事務所の「パパ、I LOVE YOU!」。ああ、こんな世界があるのね、と感激しました。
−公演の企画はエネルギーが必要になります。ご家族の協力は?
飯田 主人もいろいろ・・・(笑)。このチラシも実は、主人が作ってくれたんです。頑張ってやってみろということだと思います。
−役者の皆さんは?
飯田 昨年の公演に出ていただいた方もいるので、こんな感じというのはある程度分かっているみたいです。主役の高橋一路くんをはじめ、半分以上あて書きなので、多分その人がやるとこうなるだろうと思いながら仕上げました。
−公演は5月3日と4日。連休中の2日間ですね。
飯田 一番集客数が見込めない時期だと思う(笑)。今年は大型連休で、予定がある人はまず来ないので、必死にチラシを配って宣伝しております(笑)。
(東京・杉並区の稽古場、2005.4.8)

ひとこと>演劇の道に年齢なし−。飯田さんが芝居作りに踏み込んだエピソードを聞いて、そんなことばが浮かんできました。「晩稲」でも、味わいは抜群のお米が少なくありません。そんなことを考えながら、極上の舞台を楽しみにしています。(インタビュー・構成:北嶋孝@ノースアイランド舎、小畑明日香)

 

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