<鮒田直也さん、タイソン大屋さん> ふなみち企画「3つ 鐘が鳴る 〜坂道〜」(2009年7月9日-13日)
6団体が30分のおもしろ芝居で競演 夕暮れ時に鐘が鳴る同一舞台で
鮒田直也さん、タイソン大屋さん

鮒田直也(ふなだ・なおや=左)
  1967年大阪市生まれ。大阪シナリオ学校でシナリオを学ぶ。98年The Stone Age旗揚げ。主宰・作/演出。一幕で展開するオモロ儚い作品が特長。2007年から休団中だったが、来年1月から東京と大阪で再活動。即興演劇バトル「アクトリーグ」ソニックテイル監督。
タイソン大屋(たいそん・おおや=右)
  1972年三重県生まれ。大阪市立大在学中の95年から劇団☆新感線に所属。99年アフロ13旗揚げに参加。2002年に30-DELUX 結成、主宰。08年には8000人の動員を集めるまでに成長した。芸名は「新感線の井上ひでのりさんがある日突然『お前の名前はこれでいくから』」と言って決まる。
菊池早希子(きくち・さきこ)
  横浜市出身。高校から演劇活動を始める。日本芸術学園高等部・専門部卒。在学中より映像、舞台に出演。即興演劇バトル「アクトリーグ」にも参加。
webサイト:http://funamichi.at-ninja.jp/
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−今回の企画は、みなさんの劇団が個別に公演を開くといった話ではないようです。フェスティバルのようにいろんな劇団が参加する企画なんですか。
鮒田 タイニイアリスさんを1週間借りて、いろんな劇団に来てもらって演劇祭のようなことができないかと考えたのが最初です。演劇祭というと、どういうことで括るかが問題になりますが、自分の劇団(The Stone Age)では、まず場所ありきの一幕ものでやってきたので、そういう設定を使ってやれないかと考えました。つまり同じ場所、同じ舞台美術でやってみるということですね。もう一つは、同じ時間帯でやるという設定を考えたら、パラレルワールドができるかな、と思いました。結局6団体を3団体ずつA,Bのグループに分けてやる、1団体の持ち時間は30分、作風は各団体の自由、という企画になりました(注1)。

−同じ舞台美術を異なる劇団が使って登場する企画は何度か見ていますが、いただいた資料ではその場所(舞台美術)が「坂道」となっています。しかも時刻は「夕方」で「鐘の音が一斉に鳴り響く」そうですね。
鮒田 そうなんです。同じ場所なんですが、あまり込み入った舞台美術にするよりも、風景のようなイメージが浮かんできて、坂道ならなにかドラマが生まれそうな気がしたんです。時刻も何か起こりそうなら、夕暮れ時(笑)。

−登場する6団体は鮒田さんがご存じの方々ですか。
鮒田 いえ。もちろんぼくが知っているところもありますが、タイソン大屋や菊池が集まって決めました。

−タイソン大屋さんは鮒田さんと以前から付き合いがあったんですか。
大屋 大阪で演劇活動をしてましたから名前は知っていましたが、「アクトリーグ」(注2)という即興演劇バトルに出ていて、そこで知り合いました。
鮒田 「ソニックテイル」というチームで、現在、監督としてリーグに参加中です。
菊池 私は鮒田さんと同じチームになり(タイソン大屋は「デビルドリーム」というチームに所属) 彼の作品や演出力に魅力を感じたので、東京で作家としてもっと活動していいのではないかと思いました。タイソンさんと一緒に仕事したらすごくおもしろい化学反応が起きるのではないかと考えて今回の企画になりました。

−タイソン大屋さんはいま30-DELUXというユニットで8000人を動員するほどになったそうですが、もともとは95年から劇団☆新感線で活動していたんですね。
大屋 最近は新感線の活動はご無沙汰していて、いまは自己活動ばかり(笑)。30-DELUXは笑って泣けて、ちょっと考えさせるという芝居を続けてきましたが、今回(東京公演6月10日-14日、名古屋公演6月20日-21日、大阪公演6月26日-27日)は戦国時代を舞台にした大河ドラマのような芝居に挑戦しています。30-DELUXの活動だけではなくて、これを機会に若い人たちの活動も知りたいし、ぼくの知らない劇団もこの企画に参加するので楽しみにしていますし、楽しい演劇祭にしたいと思います。

−タイソン大屋さんと鮒田さんが組んで登場するんですよね。
鮒田 はい、今回の演劇祭を主催するのが「ふなみち企画」で、演劇祭に参加する二人のユニットが「ふなみち」です。ちょっとややこしいんですが、ネーミングは簡単で、鮒田の「ふな」と…。
大屋 ぼくの本名が「みちよ」なので「ふな」と「みち」を足して「ふなみち」(笑)。

−ユニット「ふなみち」の舞台はどんなお話でどんな展開になるんですか。
鮒田 うーん、エーと…。
大屋 出演者の顔合わせまでには本ができるということだね(笑)。
鮒田 夏の準備をする三人の神様の話を書こうかなと。これ以上しゃべると、今はズレるかもしれないので(笑)。
大屋 しゃべらんほうがええですね(笑)。
菊池 私の勘だと、おもしろくて切ないお話になりますよね(笑)。
鮒田 そうそう、おもしろくて切ない話です(笑)。
大屋 ふなみちの舞台にも出ますが、公演と公演の合間にぼくがトークでつないで受け渡しもします。パラレルワールドの水先案内人、全体の司会ですかね。

−劇場としてタイニイアリスを選んだのは?
大屋 ぼくはAfro13 というグループの旗揚げメンバーで、タイニイアリスで公演したことがあるんです(6th Live「クロマニョンショック」2001年)。劇団☆新感線で東京の大きな劇場は経験していましたが、自分独自の活動で「やるぞ!」と来たときにお世話になったので、とても思い出深い場所なんです。

−そうですか。以前、Afro13代表の佐々木智広さんにインタビューしたことがあるんですよ(アリスインタビュー「コラージュと稽古場から作品が生まれる 海外公演を見据えた芝居づくり」)。
鮒田 そのときのインタビューに佐々木さんと一緒に出ていた松崎史也君も今回「ふなみち」に出演するんです。
−そうですか。縁はつながるんですね。今回出場する団体はそれぞれ個性がありそうですが。
鮒田 そうですね。6団体それぞれ明確な特徴があるし、お互い似てないですね。そこがおもしろい。

−一回限りの企画なんですか。
大屋 フジロックフェスティバルの演劇版のように、何度も続けられるといいですね。
菊池 今年のふなみち企画のフェスティバルに、こんな劇団が出るらしいというように、話題になってくれるといいと思います。みなさんが自分たちの劇団が選ばれる、選ばれたと思ってもらえるようになれたらうれしい。
大屋 出場した劇団同士が交流したり、その結果新しい流れが生まれたりしたら楽しいですね。

−上演時間が60分とか15分の企画はありますが、30分という企画は珍しい。フットワークが軽くて挑戦しやすい枠組みかもしれませんね。
大屋 飲茶の食べ放題、みたいな企画でしょう(笑)。

−最終日(7月13日)に予定されている後夜祭『アドシバ!』って何でしょう。「対戦型演劇バラエティ」と書かれていますが。
鮒田 関西で大人気の即興芝居イベントです。個人や劇団がそれぞれ対戦して、アドリブ芝居はもちろん、芝居後のトークの面白さお客さんに評価してもらって勝者を選びます(注3)。今回がちょうど30回になるらしいので、ふなみち企画の最終日にセットして、この「アドシバ!」というイベントを楽しんでもらいたいと思います。

注1)参加6団体は次の通り(ふなみち企画Webサイトから)
【Aグループ】
劇団スカッシュ…フラットなステージに人や紐、箱などで舞台をシンプルに構築。繊細な人々の感情が一つの大きなカタルシスに向かって爆発する様を描く。すがすがしさを追求する劇団。
【作・演出】大塚竜也【出演】大塚竜也 大塚祐也 中田大地 前川健二
ひげ太夫…日本で唯一の「出し物芸」を追求する団体。冒険活劇を得意とし、芝居の中で組み体操を使うのが特徴。
【作・演出】吉村やよひ【出演】吉村やよひ 成田みわ子 永井ひとみ 林直子 鈴木のぞみ 松本千恵 東海紗希
ふなみち…鮒田直也(The Stone Age)とタイソン大屋(劇団☆新感線/30-DELUX)の新ユニット。
【作・演出】鮒田直也【出演】タイソン大屋 金月真美 浦田雅世 加藤栄一郎 松崎史也
【Bグループ】
◎小泉信奇劇…吉本興業の本格POP劇団・THE・フォービーズと、吉本興業のある意味最強アングラ芸人・アッハー小泉の異色ユニット。
【作・演出】アッハー小泉【出演】アッハー小泉 いぐちしおり 伊藤真奈美 今村聡 岡田亜矢 勝山智世 高尾宗宏 高平圭 水野似津美 宮本徳子
芝居舎「然〜zen〜」…08年に西村清孝が東京セレソンDXを退団後、「cineman」主催の鈴木穣を脚本・演出に迎え、2人で旗揚げ。しっとりと深く人間模様を描く作風が特徴。
【作・演出】鈴木穣【出演】鈴木穣 西村清孝
劇団パラノイアエイジ…日本舞踊や殺陣を取り入れた「ネオジャポネスク」が特徴。様式美が紡ぎ出す「幻想的」で「耽美」、「懐古的」な作風は他に類を見ない。
【作・演出】佐藤伸之【出演】秋場千鶴子 伊藤貴子 長縄龍郎 他
対戦型演劇バラエティ アドシバ!
【司会】上田ダイゴ 【アシスタント】サリngROCK(突劇金魚)
※アシスタントは変更される場合があります。
注2アクトリーグ…役者が「演技」武器に闘う新型エンターテインメント。関東4チーム、関西4チーム、計8チームが一年間10戦に渡るリーグ戦を関東、関西それぞれの地で繰り広げ、合計獲得ポイントでリーグ優勝が決まります。リーグ優勝した二チームが日本一の座をかけて日本シリーズを闘います。
注3)対戦型演劇バラエティ「アドシバ!」公式サイト→ http://no5noism.smile.tc/ad/adtop.html

  ■チケットお取り扱い☆ふなみち企画サイトで予約
  ■お問い合わせ 070-5026-0315 funamichikikaku@yahoo.co.jp

ひとこと> アリスインタビューで会うのは、これまで舞台を見たことのない団体がほとんどです。それだけにいつも初対面のわくわく感がたまりません。ふなみち企画の鮒田さん、タイソン大屋さんの公演もみていませんでしたが、十年以上活動してさまざまな経験を積んできた二人だけに話はおもしろいし、呼吸も心得ていて、あっという間に時間が過ぎていきました。同じ舞台美術を使って6団体が30分のステージで競演するという企画。対戦型演劇バラエティ「アドシバ!」もお披露目するそうなので、どんな熱気が飛び交うのか食欲をそそります。
(インタビュー・構成 北嶋孝@ワンダーランド)

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