〈大塚恭平さん、遠音夢黒さん〉劇団CAT「Desire」(2009年9月22日-23日)
自分たちの良さを発揮するためにどんどん芝居をやって行きたい

鮒田直也さん、タイソン大屋さん

写真:前右から大塚恭平、遠音夢黒、2列目右から渡邉エリカ、阿部剛士、伊藤未緒3列目はスタッフ陣
Webサイト  http://gekidancattokyo.is-mine.net/
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 今回は稽古場にお邪魔して通し稽古を見させていただきました。公演3週間前にして、通し稽古という進み具合。俳優陣はみな声がよく、またその声のアンサンブルが心地よく響く劇団でした。稽古後にインタビューさせていただきました。

―団長(主宰)の遠音夢黒(とおおん・むくろ)という名前はどういう風におつけになったのでしょうか。
遠音 ミクシィのハンドルネームで、元々「音夢(ねむ)」という名前を使ってました、芝居をやっていたので、夢見ている気分で聞こえる声とかを伝えていけたらいいなぁと思いまして、つけたんです。ところがある日マイミクシィの足跡(自分のページを閲覧した人の記録のこと)に全く同じ同じ名前の人がいまして、それはいかんだろうと(笑)、「かぶった!」という感じで代えることにしました。「遠い」ところから聞こえるという感じと、真っ暗なところから聞こえるという感じを付け加えました。

―奥の方に黒いものがあるというと、能でいう「幽玄」のようですね。
遠音 今度から、文字化けしないようにパクらせてもらいます(笑)。

―もう一人の主宰の大塚さんは、お幾つですか。
大塚 25です。団長は22です(笑)。

―お二人の経歴をお話しください。
遠音 ぼくは旭川出身なんですが、先輩が札幌で劇団をやってまして、高校を卒業するとき、何もやることがなくて、「じゃやってみろよ」と先輩にいわれてその劇団に入ったのがきっかけです。それまで特に演劇をみたこともなかったんです。
  一昨年まで3年ぐらい、札幌で活動してました。それから、東京にでてきました。
  この劇団は、声優の事務所養成所の同期メンバーが中心になって始めました。大塚くんが芝居をやりたいね、といいだしまして、ぼくもいいよねという流れでした。
  彼が初の演劇だったので、裏方とか制作で手伝いますよ、って感じで、ツートップという形で動き出しました。
大塚 ぼくは去年、その声優事務所に入りました。それまでは大学を出て、わりと大きい会社に勤めてたんですが、事務所の社長さんのお話を聞く機会があり、面白そうだから、と思って、オーディションを受けさせてもらったら、たまたま入れたんです。特別な興味がないままにノリで入っちゃったんです(笑)。
  試しに何が面白いかわからないけど、とりあえずやってみようとやり始めました。声優として出始めるうちに、これだけだとものたりないなと思い出して、芝居を遠音くんと始めたのです。ですから団員は全員声優です。

―どうりで声がいいな、と、声のアンサンブルがとてもいいので、これで納得がいきました。
遠音・大塚 ありがとうございます。

―声優も厳しい世界ですよね。
大塚 同じ事務所の養成所にいたんですが、まだ養成所にいるものもいますし、既にいろいろな事務所に属して活動しているものもいます。

―劇団名はどんな意味が込められてますか?
大塚 猫ももちろんかぶってますが、アクション(A)が出来る(C)チーム(T)という分かりやすい名前をつけました。

―前作は『ラブとか』でしたが、どんな芝居でしたか。
遠音 既成台本ものでした。
大塚 バリバリのコメディでした。自分たちで少しアレンジして、今時の笑いをいっぱい入れて、自分たちが楽しめて、同時にお客さんたちも楽しめるというのをコンセプトに作りました。

―前回もタイニイアリスでしたね。
遠音 劇団を立ち上げて、稽古を開始したんですが、準備が遅くてですね。問い合わせた劇場はみな埋まっていて、たまたまアリスだけがクリスマスの24、25日がドンぴしゃで空いていたんです。更にクリスマスだから割り引くよっていってもらって(笑)。「是非!」ということでした(笑)。

―今回の芝居の見てもらいたいところはどこでしょうか。
大塚 前回はSFのコメディ、今回は同じSFでも中にシリアスをいれることで、自分たちの中にある根っこの部分、本能的な部分を、ちゃんとお客様に伝える表現で形にしてだして行きたいです。
  どういう形でもいいんですけれど、お客様に伝わり心に残るような表現を提供して、ほんと基礎的なことなんですけれど、ひとつ上の表現をしていきたいというのが、今回の目標ですね。

―ホンは既成台本ですか。
遠音 これはネットで探し出してきました。千葉の高校演劇というHPで探しだしてきました。生徒の創作優秀脚本です。

―これからの劇団としての目標、計画をお聞かせください。
遠音 そうですね。それぞれが、去年一つの舞台を通過したことで、演技のやり方がいろいろ違ってきました。それぞれの団員が空いた期間に仕事をしたり、勉強したりとで、いろんなものを吸収してきたので、それを生かしてまず今年の芝居をきちんとやりたいと思います。
  去年がコメディ、今年がシリアスとやってきまいたので、次はそれをあわせていきたいです。自分たちがやりやすいものが明確にわかってきたんですよ。それを発揮できるものが何かを模索しながら、短いスパンで発表していけたらいいなと思ってます。まず年2回芝居をやりたいです。
大塚 ふだんはみんな違うところで、ダンスや歌をやっているのでそういうことも踏まえて、そこに自分たちの本来目指す、楽しんでやるという根底は残しつつも、幅広い展開をしていけたらなと思っています。
  脚本についても、自分たちでも書きたいとおもってます。劇団のHPにインターネットラジオをつくっているんですが、そこでトークとともにラジオドラマをつくっています。それを積み重ねていって、じょじょに長いものを作って行きたいと思っています。

―演出の家族猫というのは、どなたなんですか。
遠音 うちの劇団は固定の演出家がいなくいんです。集団演出の名前です。
  ふだんは稽古を公園でやってまして、新宿のいつもやっている公園によく家族猫がでるんです(笑)。それからつけました(笑)。

遠音 ぜひ役者一人一人からのことばもお願いします。
―わかりました。では、阿部さんから。
阿部 阿部剛士です。この中では一番年長なんですが、まだ養成所に通っています。出身は千葉です。大学を出て、自動車の整備士として働いていたんですが夢をあきらめきれず、専門学校に入りました。
  今回2回目の公演ですが、自分の中の課題を一つでもクリアできたら、「勝ち」かなと思ってます。声優の保志総一朗さんを目指してますので、いろいろと模索していきたいと思います。

―次に伊藤未緒さんですね。
伊藤 私は福島県出身です。とりあえず東京に出て何かしたいことを見つけたいと思ったんで、高校の後一年間地元でバイトしてお金ためて、東京にでてきました。
  友達の声優オーディションについていったら、私も誘われて受けることになり、うかってしまいました。
  オーディション時にやったエチュードが面白くて、芝居をやりたくなりました。それまでは洋画ばかり見ていて、芝居を見たことはなかったんですけれどね。
  実際舞台に立つのは演技でいろいろ悩みますが、とても勉強になり楽しいです。

―渡邉エリカさん、ひとことどうぞ。
渡邉 私は高校卒業して、専門学校をでてから、養成所に1年間行きました。
  声優専攻だったんですが、そこの学校の指導方針で、ずっと舞台をやっていました。声優もまず演技からだからということでした。
  今は映像の事務所に所属して、エキストラとかをやっています。
  この劇団は仲が良くて、アットホームで気がねなく、長くつづけられそうな気がしてます。 (2009年8月30日)

【略歴】
大塚恭平(おおつかきょうへい)
1984年埼玉県越谷市生まれ。大学卒業後、一般企業に就職するも家庭の事情で退社。 昨年からRPEに入所、同期メンバーを募り2008年に劇団CATを結成。同12月、第一回 公演を敢行する。
遠音夢黒(とおおんむくろ)
1987年北海道旭川生まれ。高校卒業後、札幌にて演劇活動を始める。札幌演劇祭 FixMixMax、ドコモ北海道ショートドラマ、聖ロイヤル歌劇団などに出演。昨年上京し 声優事務所に入所。大塚恭平とともに劇団のまとめ役を担う。

ひとこと> 声優とその卵たちの劇団というと、硬派な演劇好きからはあまり賛同を得られないかもしれない。しかし、演技面ではまだまだであっても、さすがの「声の良さ」は、十分に強力な魅力である。演劇界に入ってくるきっかけはなんでもいいはず、若者たちを応援願いたい。自らいうように、長く活動し続けていくことを望んでいる。(インタビュー・構成 カトリヒデトシ)

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