<きむらゆうかさん、赤桐祐也さん、船越都さん、NEGIさん> 劇団平成商品 第8回公演「6人の法則~うちのじいちゃんがあとちょっとで死にます~」(2015年1月30日-2月1日)

◎一人二役で別々の家族を演じる 人間の裏表をブラックコメディー調で

「役者は商品」

−札幌で活動していたとうかがいました。いまもメンバーは北海道ですか。

きむらゆうかさんきむら 立ち上げは札幌でしたが、昨年から東京に活動の場を移しています。10月に動き始めたのでちょうと1年経ちました。

−旗揚げはいつころでしょう。

きむら 5年前です。札幌の演劇専門学校出身の5人で旗揚げしました。当初から私が主宰です。

−どんな活動をしているか劇団のホームページを探してみたのですが、次回公演の告知が見当たらないし、メンバーのプロフィールも「?」だらけでしたね(笑)。

きむら 実は、まだできてないんです、すみません(笑)。作品のテーマは、ホームページに掲げた通り「馬鹿は馬鹿なりに一生懸命生きている」 「人間は、聡明で且つ残念な生き物である」ですね。あと劇団は、役者は商品であるということを指針にしています。

−役者は商品、ですか。ふつうは、役者は人間だとか、作品に血を通わせる身体存在だと言った方が通りがいいと思いますけど。役者が商品だ、というのはどういう意味でしょう。

きむら 美男美女が揃っているわけではないし、それでもお時間やお金を費やして私たちの舞台を見に来ていただいているわけだから、出演者はいつでも売り物を作っているという意識を持って稽古に参加して欲しいと思ってそう言っています。

−入場料に見合う舞台を見せたいということですね。

きむら 恐ろしいけど、そうですね(笑)。

−入場料は、第1回から変わってますか。今度が第8回公演ですね。

きむら 札幌の旗揚げ公演は1000円、いまは3000円です。現在は3倍になってます(笑)。

−それだけキチンとした舞台になったと…。

きむら 札幌の公演入場料と東京では、1.5倍ぐらい違うという事情はあります。そうですね、最初はほとんど素舞台でしたが、いまは団員が増えて舞台セットも自分達で作製し、それぞれの公演にふさわしいテイストに仕上げているつもりです。

公演チラシ(表)公演チラシ(裏)
 「6人の法則~うちのじいちゃんがあとちょっとで死にます~」公演チラシ 表(左) 裏(右)

役者が家具や風景になる

−どんな舞台が多いのでしょう。劇団の話し合いで次回に取り上げるテーマを決めるのですか。それとも主宰のきむらさんが提起するのでしょうか。

きむら 私が作、演出ですので、私が作ります。

−作品の特徴は…。

きむら よくジャンルは何かと聞かれることがあります。笑ってみられるのか、ハンカチを持っていった方がいい公演なのかとか(笑)。答えは難しい。いちばん近いのが、ブラックコメディーという答えかもしれません。札幌ではよくそう言われていました。ホラーのテイストが強めの劇団でした。でもただ怖いというのではなくて、優しい人が実は意地悪だったり、気持ちや育ちから生まれてくるずれによってストーリーが出来上がっていく。誰が悪い奴で、誰が解決に導くのかというようなことが作品に一貫して流れていると思います。

−今回の作品は「六人の法則」です。6人家族のお話ですか。

きむら いえ。出演者が6人です。会話しない出演者は普通、袖にけてますが、今度の舞台は、家具だったり風景だったり、6人で表現する舞台になります。

−エーッ、役者が家具を演じるのですか(笑)。折々そういう舞台を作ってきたのですか。

赤桐祐也赤桐 ぼくは平成商品の劇団員じゃないですけど、ぼくが所属している劇団(虹想旅団)は、役者がよく風景のシーンを受け持ったりします。

−今度の舞台は、虹想旅団の舞台からヒントを得たりしたのですか。

きむら 実は札幌時代の後輩が東京で演劇活動していると聞いて(赤桐さんに)声を掛けました。札幌時代は私たちの劇団に所属してたんだよね。

赤桐 そうです。

船越都さん船越 私はきむらさんの高校時代の後輩です。高校演劇の活動をしながら劇団平成商品に関わって出演したりしていました。東京に来てからは、今年4月の舞台に出ました。

−平成商品はどんな特徴があると思いますか。どんなところに惹かれましたか。

船越 きむらさんの演出が好きですね。気持ち悪いことをダンスで表現したシーンを札幌で見て衝撃を受けました。いまは劇団内部に入ったので、自分でそれをうまく体現したいと思っています。

再演は一人二役で

−公演は年明けですが、台本はできていますか。

きむら 今回は、札幌時代の舞台の再演になります。だから台本は出来てはいますが、初演は10人が登場する作品で、60代から10代まで幅広い年齢の出演者が演じました。

−登場人物が減ってしまうと、ストーリーも変わったりしますか。

きむら 私はこの作品に惚れているので、大きく変えようとは思いません(笑)。

−どうして6人になったのですか。

きむら 話の構想上、初演では祖父が亡くなるという設定と、初めて子供が産まれるという設定の2家族が登場しました。今回の再演では、役者が一人二役で別々の家族を演じるという挑戦をしてみようと思っています。ですから台本は直すところがないのですが、演出が大変です。

−なるほど。それはおもしろくなりそうですね。では、まだ話していない方に自己紹介してもらいましょうか。

NEGIさんNEGI アルファベットで綴って、ネギと読ませます。本名に「ネ」も「ギ」も出てきませんけど(笑)。最初に出演したときのあだ名がそのまま芸名になりました。ローマ字にすると、いっぺんに名前を覚えてもらえます。船越と同じく、第5回公演から舞台に出ています。

−演劇学校で一緒だったんですか。

NEGI 札幌時代は、姉妹校の声優養成校に通っていました。友人から客演の役者を求めていると聞いて出たのが劇団に入るきっかけでした。演劇の経歴は劇団員の中ではいちばん短いと思います。

−声優から、いまは役者になってしまったのでしょうか。

NEGI まだ声優になりたいという目標はあります。ただ演劇ができなければ声優としても活躍できないと思っていたとき、ちょうどタイミングよく声を掛けてもらったので、これはチャンスだと思って舞台に立たせてもらいました。

−東京に来て、どこかの学校で学んでいるのですか。

NEGI 今年初め、メンバーの中では一番遅く東京に来たので、まだ学校で勉強するところまではいってません。今年4月の舞台に出たのが東京で初めての演劇活動です。

−どんなところをお客さんに見てもらいたいと思いますか。

きむら 人間の本質を見てもらいたいと思います。愛やお金、友人など自分の環境のなかで優先順位を付けなければならなくなると、手放すものが出てきたりします。そこがおもしろいと思って作品を書いていますので、そんなところを見てもらえたらうれしいですね。

−2家族を一人二役で演じるところも見所になるのですか。

きむら どこかでつながりがあるようにこれからするかもしれませんが、最初はまったく別家族として登場します。

いままで以上に頑張ります

−アリスフェスティバルに参加したのは。

きむら 札幌で東京公演をしたことのある劇団に話を聞いたら、みなタイニイアリスで公演していたので4月公演のときに劇場として選びました。そのときの舞台を見たプロデューサーの西村博子さんから声を掛けていただきました。「とてもおもしろい舞台なので台本をもらえないか」「映像は撮ったのか」「使った音楽はどこで手に入れたのか」「あなたはいったいどこから出てきたのか」(笑)などなど、いろいろ聞かれました。

−西村さんの琴線に触れたのですね。アリスフェスティバルは30年あまりの歴史があります。いまは大きくなったり有名になったりした劇団も、このフェスティバルが踏み台になっているケースが多いのではないでしょうか。旬の劇団、可能性のある劇団が参加してきた歴史ですね。みなさんの公演が楽しみになりました。

きむら 東京に来て初めて、アングラに近いテイストだと言われました。私は映画好きで、ホラー系を中心に毎週何本か見ているのですが、見たときの「痛い!」とか「ぞっ!」とした感じが好き(笑)。分かる分かる、辛いね、という気持ちを舞台に乗せたい。演劇でしか表現できない方法というと、音楽をジャンジャン流したりダンスで踊ったり、音と色でど派手に表現することをまず考えます。そんな気持ちを、演技と言うよりは、身体で表したいと思います。そんなことがアングラと言われたのかもしれませんね。

−みなさん、ほかに言い足りなかったり付け加えることはありませんか。

出演者
【写真は、左からきむらゆうかさん、赤桐祐也さん、NEGIさん、船越都さん。禁無断転載】

船越 今回の芝居の初演のときは、スタッフとして手伝っていました。そのとき見て、ぜひ出たいと思っていたので、今回出演できて光栄です。自分なりに初演を超えるようにできたらいいなあと思っています。

NEGI メンバーの中でぼくは下から2番目に若いのに、役はおじいちゃんです(笑)。初演のときは船越と同じでスタッフとして参加していました。個人的な体験になるのですが、ぼくはおじいちゃんもお父さんもあまり知らずに育ったので、自分の中にイメージのない役をどう演じるか、自分なりのおじいちゃんをやれたらいいなあと思います。

−それならもう、演出のきむらさんの言う通りにやるしかありませんね(笑)。

きむら 演出を超えてやって欲しい(笑)。

赤桐 同じ舞台を初めて2回見たのがこの作品の初演の舞台でした。好きな舞台に自分が出演できるので、プレッシャーを感じています。いままでやってきたなかで、いちばん頑張るんじゃないかな(笑)。

−そういうときは、いままで以上に力が出ると言うと、演出のきむらさんは喜ぶんじゃないかな(笑)。次回の舞台が待ち遠しいですね。ありがとうございました。

(2014年10月23日、東京・中野の東部コミュニティーセンターで)
(聞き手・構成 北嶋孝 写真撮影:三浦タマ)


【略歴】(発言順)
きむらゆうか
兵庫県出身。「ゆうか」は「憂歌団」から由来する本名。両親の影響で幼い頃から妖怪を愛す。旗揚げから現在まで脚本・演出・振付を担当。札幌の多くの作品に客演として参加。また映像作品などにも出演。劇団平成商品は、きむらの頭の中にある生々しさと悲しい人間らしさと、可愛い中毒性のあるダンスが特徴的。
赤桐祐也(あかぎり・ゆうや)
1989年11月28日生まれの25歳。北海道出身。芸名の由来は所属していた劇団の名前、虹色旅団から虹の中にある色から使われた。北海道在住中にきむらの作品に何度か出演。 まるでウォーターベッドのようなお腹で叩くと波紋が広がる。
船越都(ふなこし・みやこ)
札幌にある高校で演劇を始め、芝居の楽しさに目覚める。在学中、OGであるきむらゆうかと出会い、第五回「桜田真希(16)の場合。」に出演。卒業後、正式に劇団員となり上京。第七回公演「彼女の、利口な自殺未遂。」に出演。
NEGI(ねぎ)
札幌市出身の23歳。声優科の専門学校在学中、知人から紹介され劇団平成商品第五回公演に客演として出演し、専門学校卒業後に正式に劇団員となる。演劇暦は3年ほど。


公演概要
劇団平成商品 第8回公演「6人の法則」~うちのじいちゃんがあとちょっとで死にます~
タイニイアリス(2015年1月30日-2月1日 )

出演 三浦タマ、高山龍、船越都、NEGI、赤桐祐也、きむらゆうか
脚本 きむらゆうか
演出 きむらゆうか
料金 【一般前売】3,000円 【学生前売】2,000円 【一般当日】3,500円 【学生当日】2,500円
サイト http://heisei-syohin.jp


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